片岩の集落27を1つの名前で束ね直した
Aldeias do Xisto
2005年3月にセルタン町で19棟の修復に7割の補助が付いた。2018年11月には国の観光公式サイトに載り、2019年8月には星空の暗さで国際認証を受けた。2020年7月には過去最良の6月と発表され、滞在が2〜3泊から5〜6泊に伸びたとされる。2021年時点で21自治体・100を超える民間事業者が参加している。
何をしたか
ポルトガル中部の山間地ピニャル・インテリオルに散らばる片岩(xisto)造りの集落を、1つのネットワークとして束ね直した事業。空き家の修復費を所有者に補助し(セルタン町の例で7割・19棟に6万ユーロ)、公共空間の整備と併せて集落の見た目と使い方を揃えていった。2005年時点では13自治体23集落が対象で、運営は「ピニャル・インテリオル領域統合行動」が担っていた。のちに専門の公社 ADXTUR が引き継ぎ、2021年時点では21自治体27集落と100を超える民間事業者が参加している。個々の集落を売るのではなく、共通の名前を作って一括で売った点が特徴である。
誰が始めたか
先に動いたのは自治体であり、観光の専門組織は後から来た。
2005年3月14日の PÚBLICO(Lusa 配信)が伝えているのは、カステロ・ブランコ県セルタン町の議会が「Aldeias do Xisto」の継続を前日に発表したという事実である。補助を受け取るのは自治体ではなく、公募に応じた建物の所有者である。 同町の副議長 José Ramos Moreira は、19人の所有者が改修工事の費用について7割の補助を受けると述べ、事業はとくに象徴的な建造物の修復に向けられ、劣化を防いで観光を呼び込むためだと説明している。
この時点で束ねる主体は観光組織ではなかった。 同記事によれば、事業は中部地域の地域振興計画(Programa Operacional da Região Centro)の一部で、対象はピニャル・インテリオル地域13自治体の23集落、運営は「ピニャル・インテリオル領域統合行動(Acção Integrada de Base Territorial do Pinhal Interior)」が担っていた。同記事は、その領域が21自治体・51万ヘクタール・人口18万人にわたると書いている。
あとから観光の専門公社が引き継いだ。 2018年11月8日の Notícias ao Minuto(Lusa 配信)以降、出典が名指しする主体は ADXTUR(Agência para o Desenvolvimento Turístico das Aldeias do Xisto)である。Observador 2020年7月23日は、ADXTUR がフンダン町バロカに本部を置き、ネットワークを率いていると書いている。つまり順序は、地域振興計画の枠 → 領域統合行動が運営 → 各自治体が公募して所有者に補助 → ADXTUR がネットワークとして運営、である。
新しい取り組みでも同じ順序が繰り返されている。 2021年7月8日の Notícias ao Minuto によれば、星空観光「Dark Sky」を始めたのはパンピリョーザ・ダ・セラ町で、副議長 Jorge Alves Custódio は、町が最初の一歩を踏み出して協力者を呼んだと述べている。技術面はアヴェイロ大学、観光面は ADXTUR、広域はコインブラ地域自治体間共同体、認証面は Dark Sky 協会が担う形になった。同氏によれば、10年ほど前にアヴェイロ大学が同町で観測条件を見つけ、機材を設置したところ、星空を求めて訪れる人が多いことが分かったという。
いくらかかったか
事業全体の総額は確認できなかった。 出典から取れるのは、初期の1つの町の1年分の額と、災害時の資金枠の上限だけである。
- セルタン町の2005年の分は、19棟の民間建物の改修に6万ユーロ。 所有者は費用の7割の補助を受ける(PÚBLICO 2005年3月14日)。直す対象が私有の建物であるため、費用は所有者と補助の分担になっている
- それ以前に、同町ペドロガン・ペケーノで公共空間の工事に24万5,000ユーロ。 教会前広場(adro)と市営市場の周辺である(同記事)
- 原資は地域振興計画である。 同記事は事業が Programa Operacional da Região Centro に組み込まれていると書いている。個々の自治体が単独で用意した予算ではない
- 災害時には別の線が引かれた。 2017年12月17日の Dinheiro Vivo(Lusa 配信)によれば、6月と10月の火災のあと、被害を受けた企業向けに上限15万ユーロの流動性枠(最大75%が返済不要)が設けられ、河川浜・歩道・その他の観光施設の修復には上限40万ユーロの枠が置かれた(自治体の申請にもとづく)。特別条件の銀行融資枠も加えられ、復旧計画の作成は中部地域調整開発委員会(CCDRC)が支援した。国際的な販促キャンペーンには欧州緊急基金の資金が充てられた
- 回収の側は直販に寄せている。 2018年11月8日の Notícias ao Minuto によれば、ADXTUR は予約サイト「Bookinxisto」を国の観光公式プラットフォーム Visit Portugal に載せた。同社の Rui Simão は、これが仲介者を通さずネットワークの提携先に直接つながる販売経路であり、5言語で提供されると説明している
funding_scale にはセルタン町の例と2005年時点の公共空間工事の額だけを入れ、事業全体の総額は確認できていないと明記した。
真似するなら最低何が必要か
1. 共通の名前と、それを持つ主体。 個々の集落を売るのではなく「Aldeias do Xisto」という1つの名前で束ね、その名前で予約まで受ける。名前を管理する主体(ADXTUR)が自治体の外側に置かれている
2. 私有の建物に届く補助の仕組み。 セルタン町の例では、公募に応じた所有者が費用の7割を受け取る形になっている。直すのは町の建物ではなく人の家であるという前提から設計されている
3. 自治体をまたぐ枠組み。 2005年時点で13自治体23集落、2020年以降は27集落と20〜21自治体、民間事業者100超(下の「今どうなっているか」参照)。1つの町では成立しない規模で設計されている
4. 自前の予約・販売の経路。 Bookinxisto は5言語で、仲介を挟まない直販として説明されている。2020年には「Aldeias do Xisto の受付」と呼ぶ仮想の窓口を置き、予約が入るとその地域で行ける場所・歩ける道・混み具合・推奨時間を客に伝える形にした(Observador 2020年7月23日)
5. 災害に当たったときの資金の線。 2017年の火災では、上限15万ユーロ・最大75%返済不要の流動性枠と、上限40万ユーロの修復枠が用いられた。山間の集落を束ねる事業は火災に当たる
6. 土地固有の条件を認証まで持っていく道筋。 Notícias ao Minuto 2021年7月8日によれば、この地域は年264日が晴天で全国平均を上回り、2019年8月に Starlight 財団が「Dark Sky Aldeias do Xisto」に国際認証を与えた。認証の取得には大学(技術)と協会(認証)の両方が加わっている
確認できないものは、事業全体の総額、開始年そのもの(下記)、27集落で最終的に何棟が直されたか、ADXTUR の設立年と設立の経緯、補助の原資に占める EU 資金の割合、Spab のような住民出資の器があるかどうかである。
今どうなっているか
2026年8月時点で確認できた最も新しい記録は、2021年7月8日の Notícias ao Minuto の記事である。最新の出典が5年前であり、それ以降の状況は確認できていない。
2021年7月時点で同記事が伝えているのは、ADXTUR が中部地域内陸の27集落からなるネットワークを率い、21自治体と100を超える民間事業者が参加していることである。ただし同記事はこの数字の出所を「このネットワークのサイト」と明記しているので、取材で確かめた数ではない。同日22時、パンピリョーザ・ダ・セラ町ファジャン集落の教会前広場で、町・コインブラ地域自治体間共同体・ADXTUR・Dark Sky 協会の間で協定が署名された。
参加自治体の数は出典間で食い違っている。 Observador は2020年7月23日に20自治体と書き、Notícias ao Minuto は2021年7月8日に21自治体と書いている(discrepancies に並置した)。1年間で1つ増えたのか、数え方が違うのかは、この2本からは判断できない。
2020年7月の Observador(Lusa 配信)によれば、ADXTUR の事務局長 Rui Simão は同年6月を過去最良の6月だとし、その要因として人口密度の低い安全な行き先であることと、提供が多様であることを挙げた。予約の性格も変わったとされる。 平均滞在は2〜3泊から5〜6泊に伸び、ホテルを除く宿泊施設の多くが部屋単位ではなく一棟貸しに移り、プールとバーベキュー設備のある物件に需要が集まった。同記事は、この時期の需要が主に国内市場で、スペインからの需要も出始めたと書いている。
開始年は確認できていない。 どの出典も、この事業がいつ始まったかを書いていない。2005年3月の PÚBLICO は「継続」を伝える記事であって開始を伝える記事ではないため、start_year は null のまま unknown_fields に申告し、follow_up は最古年(2005年)と最新年(2021年)の差で判定している。
出典の性格について明記しておく。 5本のうち4本は通信社 Lusa の配信を各紙が掲載したものである(PÚBLICO も PÚBLICO/Lusa 名義、Dinheiro Vivo は Dinheiro Vivo/Lusa、Notícias ao Minuto の2本は Lusa 名義、Observador は Agência Lusa 名義)。掲載媒体は4社に分かれているが、取材した報道機関の数は見かけより少ない。 また Observador と Notícias ao Minuto は Claude による取得を robots.txt で拒否しているドメインで、本文は以前に取得したものを使っている(再取得はしていない)。この事業についての否定的な報道は、今回探した範囲では見つからなかった。
出典
- Programa Aldeias do Xisto recupera 19 edifícios na Sertã — PÚBLICO(2005-03-14)
- Turismo mantém tendência de crescimento no Centro — Dinheiro Vivo(2017-12-17)
- Aldeias do Xisto na plataforma Visit Portugal — Notícias ao Minuto(2018-11-08)
- Aldeias do Xisto assinalam o "melhor junho de sempre" — Observador(2020-07-23)
- Aldeias do Xisto: Exploração do destino Dark Sky será potenciada — Notícias ao Minuto(2021-07-08)
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