店の看板と電線に覆われた旧市街の王の道を、掘り起こして遺産の姿に戻した
Shahi Guzargah
開通から3年以上あとの2023年10月、The News on Sundayが総括記事でWCLAの各事業の進捗(第1期2015年・第2期2018年完了、第4期進行中)を伝えている。
何をしたか
パキスタン・ラホールの旧市街で、ムガル帝国の皇帝がデリーからラホール城まで移動した際に使ったとされる王の道(Shahi Guzargah)を、WCLA(ラホール旧市街庁)が区間ごとに修復した。The News(2015年2月19日)によれば、Delhi Gateから383メートル続く区間で、電気・電話・ガス・雨水・下水の配線配管を地中化し、不法に張り出していた店舗を撤去し、石畳を敷き直した。Shahi HammamとWazir Khanモスクのファサードを覆っていた不法占用も、このとき初めて取り払われたという。
誰が始めたか
The News(2023年10月29日)によれば、考古学・博物館の両部局が旧市街の保存・修復・維持管理を担いきれていないという判断から、パンジャブ州政府が2012年にWCLAを設立した。WCLAは元官僚のKamran Lashari氏が率いており、同氏が旧市街を観光地にする構想を持っていたことを反映し、Shahi Guzargah(王の道)がWCLAの最初のパイロット事業に選ばれたと同記事は伝えている(AKDNは、この「パイロット」事業自体の起源をWCLA設立以前の2005年、世界銀行資金による地域開発事業としており、経緯の記述が食い違う。discrepancies参照)。
Daily Times(2015年2月22日)によれば、この事業は単なる遺跡の修復にとどまらず、卸売業者や露天商の進出でかつての住宅地から「追い出された住民を呼び戻す」(原文:bring back the residents who have been displaced)ことも狙いだったという。
The News(2023年10月29日)によれば、隣接するGali Surjan Singh(王の道から分岐する住宅街路)では、2012年にWCLAとアガ・カーン文化サービス・パキスタン(AKCSP)がドイツ大使館の助成を受けて改修を行い、電線を地中化し、下水と雨水の配管を分離した(AKDNは同じ改修の開始を2010年としており、年に食い違いがある。discrepancies参照)。同記事によれば、2021年にはAkhuwat Foundationとの協働でこの通りに植栽が施されたという。
いくらかかったか
The News(2023年10月29日)によれば、Shahi Guzargahの修復費用は区間ごとに分かれており、Delhi GateからChowk Kotwaliまでの第1期(2015年完成)に5億ルピー、Chowk KotwaliからMasti Gateまでの第2期(2018年完成)に8億9千万ルピーが投じられた。同記事執筆時点で進行中だったChowk KotwaliからSonehri Mosqueまでの第4期には3億1500万ルピーが充てられ、同年中の完成が見込まれていたという(第3期の費用は同記事に記載が無い)。
The News(2023年10月29日)によれば、隣接するShahi Hammamの修復(2014年着工・2015年完成)はノルウェー王国大使館の助成で行われた。AKDN(アガ・カーン開発ネットワーク公式サイト、2024年5月10日更新)によれば、Wazir Khanモスク北面ファサードの修復(2016年完成)にはノルウェー政府とAKTCの資金が充てられ、Chowk Wazir Khanの不法占用撤去には、パンジャブ州政府から30万米ドルの拠出があったという。AKDNは事業の実施主体の一つ(運営主体側)の発信であるため、事業全体の総費用としてではなく、個別区画の資金源として記載する。
真似するなら最低何が必要か
1. パイロット区間を選び、そこで手法を確立してから広げること。 The News(2023年10月29日)によれば、WCLAは設立直後にShahi Guzargahを最初のパイロット事業として選び、そこで確立した地中化・不法占用の撤去・ファサード修復という手法を、Gali Surjan Singhなど旧市街の他区画へと段階的に展開した。
2. 区間を区切り、資金がついた区間から順に完成させること。 同記事によれば、事業は383メートルの第1期(2015年)、続く第2期(2018年)、第4期(2023年時点で進行中)と区間ごとに分けて実施され、それぞれ別個に予算(5億・8.9億・3.15億ルピー)が確保されている。1本の長い道を一括で仕上げようとしていない。
3. 不法占用の撤去には補償と代替の場を用意すること。 AKDNによれば、Shahi Hammam周辺で外壁に張り出していた商店主に対しては、立ち退きと引き換えに補償が行われ、将来の再占用を防ぐための擁壁も築かれた。Daily Times(2015年2月22日)も、路上の物売りを移動させて道を広げたと伝えている。
4. 地中化と一体で、街路の意匠(照明・舗装)を変えること。 Daily Times(2015年2月22日)によれば、剥き出しの電球はランタン風の照明に置き換えられ、古い家屋のファサードも合わせて修復された。インフラ更新だけでなく、見た目の変化を同時に起こしている。
5. 開通を、記録に残る形の催しにすること。 The News(2015年2月19日)によれば、WCLAは第1期の完成に合わせてJashn-e-Shahi Guzargahという3日間の文化祭を開き、大道芸人や民謡歌手ら100人以上の職人・芸能者を集めた。これがWCLAにとって旧市街で初めての大規模な催しだったという。
今どうなっているか
2023年10月時点で、The News on Sundayは、WCLAが設立から10年余りをかけて手がけた旧市街の修復事業を振り返る総括記事の中で、Shahi Guzargahの第1期(2015年完成)・第2期(2018年完成)に続き、Chowk KotwaliからSonehri Mosqueまでの第4期(3億1500万ルピー)が進行中で、同年中の完成が見込まれると伝えている。
同記事はまた、WCLAが近年、州政府からShalamar庭園やJehangir廟など7件の史跡の管理を新たに移管されたことに触れ、「この移管には市民社会などから反発が出ている」(原文:The transfer has received a backlash from the civil society and some other quarters)とも記している。Shahi Guzargah事業そのものへの批判は、参照した4本の出典のいずれにも見当たらない。
第3期(Chowk KotwaliからMasti Gateの間のどこかと推定されるが、区間の具体的な範囲は出典に記載が無い)の完成時期・費用、および事業全体の終了時期は、参照した出典からは確認できなかった。
出典
- Shahi Guzargah — Daily Times(2015-02-22)
- 'Jashn-e-Shahi Guzargah' to revive culture of Lahore — The News International(2015-02-19)
- Why WCLA — The News on Sunday(thenews.com.pk)(2023-10-29)
- Pakistan - Walled city of Lahore conservation — Aga Khan Development Network(AKDN)(2024-05-10)
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