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住む人を増やす・戻す農林水産・食5万人未満

有機農業で紛争を克服した町が、都市からの帰郷者を受け入れる全国初のモデル村をつくった

Kauswagan

フィリピン / Lanao del Norte / Kauswagan

2023年の続報はカウスワガン町の有機農業の実績を伝えるが、帰郷者村そのものの現況には触れていない

何をしたか

フィリピン・ミンダナオ島のカウスワガン町(人口24,193人)で、国の「バリック・プロビンシャ、バゴン・パグアサ」(BP2、直訳「州へ戻る、新たな希望」)事業の第1号モデル村として、2020年に都市部からの帰郷者を受け入れる集落が作られた。ミンダナオ開発庁と国家住宅公社が主導し、集合住宅50戸で200世帯を受け入れる計画で、入居者は有機野菜と有機鶏の生産に従事する設計になっている。同町は2010年から元反政府勢力の社会復帰を有機農業で進めてきた経緯があり、選定にあたってMinDAは統治の透明性を理由に挙げたという。

誰が始めたか

事業を主導したのは国側で、ミンダナオ開発庁(MinDA)長官エマニュエル・ピニョル氏が、都市の不法占拠者となっていた帰郷希望者を対象に、この村の構想づくりを担ったとされる(IKOT.PH 2020年6月26日)。ピニョル氏は、この事業はカウスワガンを第1号として、国全体のモデルになると述べたという(同)。

受け入れ側のカウスワガン町では、ロンメル・アルナド町長が2010年の就任以来、ココナッツ栽培に頼っていた地場経済を有機農業中心に転換し、元反政府勢力の家族を農業で社会復帰させる「From Arms to Farms」事業を進めてきた(Philippine Daily Inquirer 2023年7月2日)。BP2のモデル地域としてカウスワガン町を選んだ理由について、MinDAは同町の統治の透明性を挙げたとIKOT.PHは伝えている(2020年6月26日)。アルナド氏自身も「BP2事業にとって、カウスワガンほど理想的な場所はないと考えた」と述べている(同記事)。

村の建設には民間資本も入った。カウスワガンに立地する企業GNパワー・カウスワガン(GNPK)が用地取得と最初の住宅棟の建設費として1千万ペソを寄付したという(IKOT.PH 2020年6月26日)。生産物の販売先として、ミンダナオの農産物取引企業エンセン・フード・プロダクツとの間で、有機鶏と有機野菜を買い取る販売契約も事前に結ばれたと報じられている(同)。

国側の事業提唱者である上院議員ボン・ゴー氏や、農業長官ウィリアム・ダー氏、社会福祉長官ロランド・バウティスタ氏、国家住宅公社総裁マルセリノ・エスカラダ・Jr.氏が、2020年11月24日の開村式に出席する予定だったとPhilippine Daily Inquirerは伝えている。

いくらかかったか

国からの交付金は、総額2,500万ペソのうち初回分として1,500万ペソがカウスワガン町に交付されたと、IKOT.PHは2020年11月26日に報じている。この資金の使途は「バゴン・パグアサ・グリーンビレッジ」の建設とされる。

これとは別に、前述のGNパワー・カウスワガン(GNPK)による1千万ペソの寄付が、6.8ヘクタールとされる用地の取得と、最初の集合住宅1棟の建設に充てられたという(IKOT.PH 2020年6月26日)。事業全体でこの先いくらかかる計画かを示す出典は、今回集めた4本には見当たらない。

真似するなら最低何が必要か

複数の出典を重ねると、いくつかの条件が浮かび上がる。

第一に、受け入れ側にすでに仕組みがあったことである。カウスワガン町は2010年から元反政府勢力を有機農業で社会復帰させる事業を続けており(Philippine Daily Inquirer 2023年7月2日)、MinDAはこの町を統治の透明性を理由にBP2のモデル地域に選んだという(IKOT.PH 2020年6月26日)。まっさらな土地に村だけを作ったのではなく、既にある仕組みの上に乗せている。

第二に、住居と生業の両方を同時に用意したことである。国家住宅公社が住宅を建設する一方(Philippine Daily Inquirer 2020年11月24日)、集合住宅50戸で200世帯を受け入れる計画とし、入居者の生業として有機野菜・有機鶏の生産が当初から組み込まれていた(IKOT.PH 2020年6月26日)。

第三に、生産物の売り先を、住民が入居する前に確保したことである。Philippine Daily Inquirer(2020年11月24日)によれば、ピニョル氏は生産から販売までの連鎖を完結させる仕組みの必要性を強調したという(原文 "complete value chain package")。IKOT.PH(2020年6月26日)によれば、入居前の段階で農産物取引企業との販売契約が結ばれている。作ってから売り先を探すのではなく、先に買い手を決めている。

第四に、公的資金と民間資金を組み合わせたことである。国からの交付金1,500万ペソに加え、地元企業GNPKが用地取得費を寄付しており、単一の財源に頼っていない。

今どうなっているか

2026年9月時点で確認できた最新の報道は、2023年7月2日のPhilippine Daily Inquirerである。ただしこの記事は、カウスワガン町が2010年から続けてきた元反政府勢力向けの「From Arms to Farms」事業の実績を伝えるもので、2020年のBP2帰郷者村や、そこに入居したはずの200世帯のその後には触れていない。同記事によれば、2023年6月にカウスワガン町で国際有機農業団体連盟(IFOAM)アジア支部主催の「第6回オーガニック・アジア会議」が開かれ、内外の専門家およそ1,200人が集まったといい、アルナド氏は、町の13集落で有機農業が根づいたと述べている。同記事はまた、2009年に49.5%だった町の貧困率が2018年には23.2%まで下がったと伝えている。

一方、帰郷者村「バゴン・パグアサ・グリーンビレッジ」そのものについては、2020年11月の開村報道以降の続報が、今回集めた出典の中には見当たらない。計画通り200世帯が入居し、有機野菜・有機鶏の生産と販売契約が実際に機能しているかどうかは、今回の出典からは確認できていない。

出典

  1. 1ST 'BALIK PROBINSYA' MODEL VILLAGE BREAKS GROUND IN LANAO DEL NORTE – PIÑOL — IKOT.PH(2020-06-26)
  2. Lanao Norte town to launch Balik-Probinsya village — Philippine Daily Inquirer(2020-11-24)
  3. KAUSWAGAN'S 'BALIK PROBINSYA' GETS P15M – ARNADO — IKOT.PH(2020-11-26)
  4. 'From Arms to Farms' gives ex-rebels another shot at life — Philippine Daily Inquirer(2023-07-02)

最終確認日 2026-09-02

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