森の中の集合住宅を、景観の側から組み直して建て替えた
Kerckebosch
この記録の出典は単一の媒体によるものです。
2025年7月の Stadszaken は、社会賃貸の割合が当初の基本計画の見込みより低いと書き、中間の価格帯の供給は限られているとも書いている。開始年は出典から確認できず、報道は2016年から2025年にわたる。
何をしたか
オランダ・ザイスト市の森の中にあった、700戸の集合住宅が四角く並ぶ社会住宅の団地を建て替えた。Stadszaken は2016年に、この地区が Falco Award の最優秀公共空間に選ばれ、審査員が、森に隠れた社会住宅の高層棟群が少しずつ住宅地に変わり、元の住人が新しい地区の中に居場所を得た点を挙げたと報じている。ランドスケープ設計を担う wUrck は2010年から加わっていると同じ記事は書いている。2019年には地区開発会社(WOM)の代表が、目標は一部の人のためでなく皆のための地区にすることだったと述べ、社会住宅は700戸から500戸に減るが、元の住人の中には持ち家や中間家賃に移れた人もいると説明している。2025年7月、建て替えが終わり995戸が実現したと報じられた。自然を避けて建てたのではなく景観の側から地区を組み立てた点を、同記事は評価の要点として挙げている。
誰が始めたか
担い手は、自治体と住宅協会が折半で作った1つの会社である。 Stadszaken(2021年9月29日)は、計画を実行するためにザイスト市と住宅協会が Wijkontwikkelingsmaatschappij Kerckebosch(WOM)を設立したと書いている。Stadszaken(2025年7月16日)は、WOM が市と住宅協会の共同の BV(非公開有限会社)で、議決権はそれぞれ50%だったとし、この形が日々の政治の動きの外で柔軟な意思決定を可能にしたと書いている。
住宅協会の名前は、出典の間で違う。 2019年6月12日の記事は WOM の2つの株主をザイスト市と住宅協会 Seyster Veste と書き、2021年9月29日の記事はザイスト市と Woongoed Zeist と書いている。どちらが正しいか、あるいは途中で名称が変わったのかは、参照した4本からは判断できない。
「森の側から組む」ことを担ったのは外部の設計事務所である。 Stadszaken(2016年10月7日)によれば、建築・都市計画・ランドスケープの事務所 wUrck のランドスケープ設計者が、2010年からチームとともにこの地区に関わっている。 同記事で同氏は、この賞を都市と自然を一体で開発したことに対する、地区の住民と一緒に取り組んだことへの報いだと述べ、Kerckebosch では自然と建物が継ぎ目なく互いに移り変わっていると述べている。
事業の開始年は、参照した4本のどこにも書かれていない。 2010年は設計事務所が関わり始めた年であって、事業そのものの開始年ではない。start_year は unknown_fields に置いたままとした。
個別の建物の言い出しっぺは別にいる。 2019年6月12日の記事は、中間家賃の44戸を含む案件について、開発業者 Slokker Vastgoed が最終的な発意者だったと書いている。
いくらかかったか
事業全体の投資額も、公的な負担額も、参照した4本のどこにも書かれていない。 出てくるのは、中間家賃の住戸を成立させるために誰が何を譲ったかである。2019年6月12日の記事が、WOM の代表・開発業者・投資家の3者に取材してそこだけを詳しく書いている。
- 中間家賃は、当初どの投資家にも引き受けられなかった。 同記事で WOM の代表は、大手の投資家をひと通り回り、小さな民間の相手にも当たったが、返ってくるのは事業として成り立たないという答えばかりで、そうでなければ土地を実質ただ同然で手放すしかないという話だったと述べている
- 成立させるために、WOM は地価を約25%下げている。 同記事で代表は、地価を25パーセントほど下げたと述べ、純粋に金の話であれば分譲住宅に賭けたほうがよかったとも述べている。同氏はこの譲歩が長期的には価値を生むとし、市にとっては住宅協会にとってよりもはっきりした形で生むかもしれないと述べている
- 家賃の水準と、上げ幅の約束が具体的に書かれている。 2019年5月14日に WOM と開発業者が結んだ合意は、自由市場の賃貸住宅48戸のうち44戸を月額800〜1,000ユーロの家賃とするもので、完成後は機関投資家がこれを引き取る。年ごとの家賃の引き上げは最低10年間、物価上昇率+最大2%に抑える取り決めになっている。WOM の代表は、これは住宅協会が用いる平均的な引き上げ幅と変わらないと述べている
- 保有期間については、当事者の間で希望が食い違っている。 同記事で WOM の代表は、市と開発業者が合意した最低10年という運用期間について、15年以上保有してほしかったと述べている。 投資家の側の担当者は、10年で切り売りする意図は無く長期で入っていると述べ、自分たちの顧客はオランダの年金基金であり、中間家賃を実現しつつ十分な利回りを出すには個別の作り込みが要ると述べている
- 順序を先に分譲へ振ったことも金の話として説明されている。 同記事によれば、危機の最中に中間家賃への関心が乏しい一方で分譲住宅の建設への関心は大きく、代表は中間家賃の目標をいったん先送りし、まず別の価格帯で成果を見せることを選んだと述べている
真似するなら最低何が必要か
1. 事業だけを担う独立した会社と、そこに渡す権限。 Stadszaken(2025年7月16日)は、WOM が合意された枠組みの中で自律的に動く権限(mandaat)を与えられ、そのため切り替えが速くできたとし、住民・開発業者・福祉の関係者との密な協働もこの中心的な組織を通っていたと書いている。同じ記事は、この形の弱点も併記している(下記5)
2. 自然の構造を先に決め、そこに住戸を割り付けること。 同記事によれば、この地区は6つの住宅クラスターと、その間の周囲の景観につながる緑地帯で組み立てられている。公共空間は開いた作りにされている。評価で目を引く点として同記事が挙げているのは、自然を避けて建てたのではなく、景観の側から地区を立ち上げたことであり、それには創意と粘りと従来と違う働き方が要ったとしている
3. 元の住人が戻れる保証と、そのための社会的な受け皿。 同記事は、元の住人に戻る保証(terugkeergarantie)が与えられ、住民の発意には継続的な支援がついたとし、コミュニケーション・参加・社会プログラムへの取り組みが出発点から組み込まれていたと書いている。Het Binnenbos やキャンパスといった施設が社会的な機能を果たしているとされる
4. 計画を市場に合わせて手放す判断。 同記事によれば、金融危機の後、市と住宅協会は当初の住宅供給の計画を手放し、地区は場所ごとに市場の需要に合わせて段階的に開発された。 その結果、自主建設用の区画・社会賃貸・介護住宅など異なる住戸の型が入る余地が生まれたとしている
5. 議会の関与が薄くなることを、あらかじめ引き受けるか手当てするか。 同記事は、市と住宅協会の折半の BV という形が政治の日々の動きの外で柔軟な決定を可能にした一方で、それは市議会の影響力が限られることも意味したとし、評価はこれを弱い点として挙げている。 さらに、前提条件がきちんと担保されていない場合、他の事業では民主的な統制が圧迫されうると書いている
6. 完成した後に、誰が引き取るかを決めておくこと。 同記事によれば、WOM は2025年の初めに解散し、その任務は自治体・住宅協会・地区の住民組織に引き継がれる。 同記事は、質の高い公共空間の整備は継続的な管理と、使われ方との擦り合わせを要し続けるとも書いている。緑地の一部は住民が Stichting Utrechts Landschap と共同で管理している
今どうなっているか
2026年8月時点で確認できた最も新しい記録は、2025年7月16日の Stadszaken の記事である。 これは Platform31 による評価にもとづくもので、同記事は建て替えが終わったと書いている。
実現した住戸の内訳が1本だけ出ている。 同記事によれば、合計995戸が実現し、その内訳は新築の社会賃貸383戸、改修した社会賃貸74戸、介護住宅110戸、自由市場の分譲312戸である。ほかに自主建設用の区画58が払い出された。 ただしこの内訳を足すと879戸で、区画58を加えても995には届かない。 何が差に当たるのかは同記事に書かれていない。なお2019年6月12日の記事は、社会住宅が半分を占める1,000戸の新しい地区が完成に近づいていると書いており、数字が異なる(discrepancies に並置した)。
評価の側が挙げている弱点は4つある。 同記事によれば、住宅価格の上昇によって分譲と賃貸の均衡が圧迫されていること、中でも中間所得層が手の届く住まいを見つけにくくなっていること、中間の価格帯の供給が限られており既存の住宅在庫の中で自動的に補われるわけではないこと、そして社会賃貸の割合が当初のマスタープランで見込まれていたよりも低いことである。2019年の時点で WOM の代表は、社会住宅が700戸から500戸に減ることについて、社会賃貸に住んでいた人の中には持ち家や中間家賃へ移れる人もいたと説明していた。 評価はこの結果を弱点の側に置いている。
外からの評価は帰属つきで並べられる。 2016年10月7日の記事は、この地区がレーワルデンで開かれた公共空間の全国大会で Falco Award の2016年最優秀公共空間を受け、決勝でアーネムとロッテルダムの駅前広場を破ったと書いている。審査委員長は、森に隠れた社会住宅の高層棟群が少しずつ住宅地に変わったこと、既存の住人が地区の中に再び居場所を得たことでこれが「分断のない都市」の一例になっていること、丁寧な参加の過程が現在の質の土台になっていることを挙げている。 2019年6月12日の記事は、この地区が「オランダで最も自然を取り込んだ地域開発」としても受賞していると書いている。2021年9月29日の記事は、NEPROM 賞の候補5件の1つに挙がり、受賞者は11月25日に発表されるとしている。受賞したかどうかを書いた出典は無い。 2025年の記事は、Leefbaarometer(2022年)でこの地区が「良い」と評価され、とりわけ施設・社会的なつながり・物理的環境の質で評価されているとしている。 同記事に載っている市の担当参事の言葉として、「質を伴った建設が、緑にも人にも目を向けながらできる」ことを示したというものが引かれている。
2021年時点の説明と、実際の結果は数が違う。 2021年9月29日の記事は、この再開発について森林に囲まれた環境に異なる価格帯の新築住宅800〜1,000戸、少なくとも45の自由区画と書いている。実際に払い出された区画は58である(2025年7月16日)。
出典の性格について明記しておく。 4本はすべて Stadszaken であり、1媒体である(single_outlet を申告した)。掲載年は2016・2019・2021・2025と分かれているが、媒体は分かれていない。 さらに2025年の1本は Platform31 の評価に由来し、2016年と2021年の2本は賞の発表に由来する。独立した取材が本文にあるのは2019年6月12日の1本で、これは WOM・開発業者・投資家という当事者3者への取材である。 住民の側からこの事業を検証した報道や、批判的な報道は、参照した範囲には含まれていない。
出典
- Kerckebosch is beste plek — Stadszaken(2016-10-07)
- Kerckebosch oogst succes met middenhuur — Stadszaken(2019-06-12)
- Deze vijf projecten maken kans op de NEPROM-prijs voor beste gebiedsontwikkeling — Stadszaken(2021-09-29)
- Leefbare wijk in bossen Zeist biedt inzichten gebiedsontwikkeling — Stadszaken(2025-07-16)
この記述は間違っていますか。受け取ってから2週間以内に、直すか直さないかを返します。