荒れた路地裏の空き店舗10軒を、壁画とテナント誘致で観光名所に変えた
Kwai Chai Hong
2019年4月に開業し、2020年6月にThe Starが観光名所として紹介した。2023年2月には路地内の店舗にバーが新規に開業したと報じられ、2025年にはクアラルンプールの観光徒歩ツアーの立ち寄り先として紹介されている。
何をしたか
クアラルンプールのチャイナタウン、プタリン通り(Jalan Petaling)と裏手のロロン・パンゴン(Lorong Panggung)に挟まれた路地裏で、板で塞がれ廃業していた戦前建築の店舗10軒(プタリン通り側6軒・ロロン・パンゴン側4軒)と、その間の路地を改修した。Malay Mail(2019-04-12)によれば、空間管理会社 Bai Chuan Management Sdn Bhd が2018年に12年間のマスターリース(2030年まで)を取得し、2019年4月に「Kwai Chai Hong(クワイ・チャイ・ホン)」として開業した。路地には1960年代の中国系住民の暮らしを描いた壁画6点が地元の画家5人によって描かれ、QRコードを読み取ると当時のラジオドラマの声優が吹き込んだ音声解説が流れる仕掛けが組み込まれている。
誰が始めたか
始めたのは行政ではなく、5人の共同創業者からなる空間管理会社である。 Malay Mail(2019-04-12)によれば、Bai Chuan Management のマネージングパートナー Zeen Chang 氏と、Ho Yong Wee・Coco Lew・Javier Chor・Terrence Liew の4氏が共同創業者で、もともとは賃料の安さと周辺の飲食店ブームに着目した「副業」としてこの10店舗を借りたが、作業を進めるうちに「愛着が生まれた」("we fell in love with this place")と Chang 氏は取材に語っている。
改修にあたっては都市再生団体 Think City が助言を提供した。同記事によれば、Think City は復元の手法や資材の選び方について助言し、専門家へのアクセスも仲介したという。開幕式典には地元選出のブキッ・ビンタン選出下院議員 Fong Kui Lun 氏も出席し、この取り組みが地域経済を押し上げ観光客を呼び込むと評価する談話を寄せた。
開業直後には批判も出た。 元ラジオDJの Chong Keat Aun 氏は自身のFacebookで、ロロン・パンゴン側の店舗に使われた黄色と青の配色を「ヨーロッパ風」と評したほか、新設のアーチや赤い橋、壁画の様式についても疑問を呈したと Malay Mail は伝えている。これに対し Chang 氏は、青は既存の窓枠の色に、黄色は壁の下地に使われていた最初の塗装層の色に由来すると説明し、赤い橋は路地に面する既存店舗の勝手口をふさがずに済ませるための実務上の工夫だったと反論している。
いくらかかったか
Bai Chuan Management は開業時点までに自己資金1.5百万リンギを投じたと Malay Mail(2019-04-12)は伝えている。 内訳として、路地に堆積していたゴミの片付けにRM20万、路地内の壁画とプタリン通り沿いの店舗に描かれた追加の壁画1点にRM12万を充てたとある。
別途、都市再生団体 Think City が復元費用としてRM94,255の助成金を出したほか、資材の選定などについて助言と専門家へのアクセスを提供したと同記事は伝えている。
店舗の賃料収入や、開業後の運営コストを示す出典は確認できなかった。 2020年・2023年・2025年の追跡記事はいずれも観光地としての様子やテナントの紹介にとどまり、金額の更新や食い違いは今回参照した5本の出典には見当たらなかった。
真似するなら最低何が必要か
1. 自己資金で改修を始められる体制を持つこと。 Bai Chuan Management は自己資金1.5百万リンギを投じており、公的資金だけに頼らずに動き出せる体制が前提になっている
2. 長期のマスターリースを確保すること。 Malay Mail によれば、同社は10店舗について2030年までの12年間のマスターリースを取得しており、改修費を回収できる期間を先に確保している
3. 復元の専門知識を外部から補うこと。 同社の共同創業者は広告業や貿易業の出身で改修の専門家ではなく、都市再生団体 Think City から資材選定などの助言を受けたと Chang 氏は述べている
4. 史跡指定の制約の中で改修すること。 Malay Mail は、10店舗が外観を変えられない「カテゴリー3」の歴史的建造物に指定されていたと伝えている
5. 批判が出ても対話に応じる姿勢を持つこと。 配色や様式への批判に対し、Chang 氏はその場で由来を説明して応じている
6. テナントを厳選しながら誘致すること。 Malay Mail の取材時点で10店舗のうち半数がすでに埋まっており、Chang 氏は場の雰囲気に合う飲食店を選んで誘致する意向を語っている。2023年には歴史的建造物の一角にバー「Baijiu KL」が新たに開業したとThe Starが報じている
今どうなっているか
2025年9月時点で確認できた最新の記録は、The Starがクアラルンプールの文化徒歩ツアーの立ち寄り先としてKwai Chai Hongを紹介した記事である。 復元された店舗街を歩き、プタリン通りの伝統的な商いに触れられる場所として案内されている。
2023年2月には、路地内の歴史的建造物にバー「Baijiu KL」が新たに開業したとThe Starが報じ、同紙はこの場所を「人気が高まりつつあるKwai Chai Hong」と表現した。 2020年6月の記事でも、夜には提灯で彩られる観光名所として紹介されており、2025年5月の写真特集では、壁画や提灯に加えて季節ごとの装飾展示(installation)が行われている様子が伝えられている。
開業から6年を経た現在までの間、独立した媒体による観光客数や収益に関する検証記事は、今回参照した5本の出典の中には見当たらなかった。 確認できるのは、観光・生活情報媒体による継続的な紹介記事のみである。
出典
- Kwai Chai Hong: Neglected lane in KL's Chinatown restored | Malay Mail — Malay Mail(2019-04-12)
- Journey to the past at KL's Kwai Chai Hong | The Star — The Star(2020-06-29)
- Old-world vibe back in Chinatown | The Star — The Star(2023-02-03)
- Charms of Chinatown | The Star — The Star(2025-05-29)
- A walk through time | The Star — The Star(2025-09-16)
この記述は間違っていますか。受け取ってから2週間以内に、直すか直さないかを返します。