繊維問屋街のまちづくり構想を地区内外の人が作り、町内会・協議会・協同組合が会社をつくった
錦二丁目
2011年から2025年まで出典がある。2018年に会社化、2022年に再開発施設と拠点が開き、2024年には2021年から続く都市農業プログラムが報じられている。
何をしたか
名古屋市中区の錦二丁目——かつて日本三大繊維問屋街に数えられた長者町を含む地区——で、地域や専門家など地区内外の人が集まってまちづくり構想を作り、その後、町内会・まちづくり協議会・地域の企業で構成する協同組合が主体となって、会社を立ち上げた。 サカエ経済新聞によれば、この地区は1990年代から2000年代にかけて空きビルや駐車場が増加し、衰退と空洞化が進んでいた。2011年の構想には「再開発型による会所と路地の実現」が示されていた。 2018年に会社が設立され、2022年に再開発施設「オリマチ錦」が完工して、その中に広場と喫茶店・貸しスペースが開いた。
誰が始めたか
始めたのは地元の組織であり、会社はその後からできている。
サカエ経済新聞(2018年)によれば、錦二丁目エリアマネジメントは町内会、まちづくり協議会、地域の企業で構成する協同組合が主体になり立ち上げたもので、設立は2018年3月である。社長に就任した名畑恵は、同紙によれば地域に関わり15年目にあたり、NPO法人まちの縁側育くみ隊のスタッフとして2004年からまちに関する学習会の開催を重ね、その成果の一つとして、地域や専門家など地区内外の人が集まり「これからの錦二丁目長者町地区まちづくり構想(2011-2030)」を2011年に発行した。構想の名称は出典によって違う。 同紙のこの記事は「地区」を含む名で書き、同紙の2022年の記事は「これからの錦二丁目長者町まちづくり構想」と書いている。
なぜ会社にしたのかは、記事に書かれている。 同紙は地の文で、街づくりの財源を生み出すことと地域の各組織の役割を再編していく必要性があるとして会社化を決断したと書いている。そのうえで同紙は、名畑の発言として、志高い人たちで街づくりを進めてきたがボランタリーでできることには限界があり、活動のための財源を確保することは急務だと述べたこと、まちづくり協議会がこれまで同様まちの主体をつなぎ全体的なビジョンを描き、会社は機動力のある事業部隊としての役割を果たせればと述べたことを伝えている。
構想が何を掲げていたかは、2つの出典で書かれ方が違う。 サカエ経済新聞(2022年5月)は、地域コミュニティーの形成、公共空間マネジメント、土地と建物のマネジメント、低炭素まちづくりの4つを、エリアマネジメントの柱として挙げている。一方 real local 名古屋(2022年)は、名畑の発言として、構想が安心居住・元気経済・共生文化の三つの柱で成り立っていると伝えている。同じ構想について並べ方が異なるため、discrepancies に並置した。
再開発そのものの施行者は別である。 名古屋市によれば、錦二丁目7番地区市街地再開発事業の施行者は錦二丁目7番地区市街地再開発組合であり、権利者数は13人、地区面積は約0.7ヘクタールである。サカエ経済新聞によれば、会社が担うのはこの施設の商業エリアのテナント企画(2022年5月)と店舗部分の管理(2021年4月)である。会所と路地については、同紙の2021年4月の記事が、商業エリアに同社が運営に関わる会所や路地などを開設する予定だと書いているところまでで、その後の運営者を書いた出典を確認できなかった。
学術の側からは、地区が事例として扱われてきた。 旭硝子財団の助成研究成果報告(2011年)は「大都市インナーシティの再生に向けた建築・都市空間の計画・デザイン手法」を名古屋市中区錦二丁目のケース・スタディを通じて扱っており、木材工業(2012年)は「都市の木質化プロジェクト」の連載の中で名古屋市中区錦二丁目長者町における試みを取り上げている。再開発コーディネーター協会の機関誌(2023年)は、錦二丁目7番地区第一種市街地再開発事業そのものを取り上げている。いずれも書誌ページしか読めていないため、内容には立ち入らない。
いくらかかったか
事業費の額は、今回の出典のどれにも書かれていない。 名古屋市の再開発事業のページは、地区面積・敷地面積・建ぺい率・容積率・構造階数・建築面積・延床面積・用途を載せているが、事業費の欄を持っていない。 会社の資本金・収支・出資の内訳も、今回の出典からは確認できなかった。
額が出ているのは、拠点まわりである。
1. 募集された床の賃料。 サカエ経済新聞(2021年4月)によれば、会社が募集した1・2階のテナントは1区画の面積が9.73坪、1階と2階に各2区画の計4区画で、賃料は月額22万円からとされていた
2. 貸しスペースの利用料。 同紙(2022年5月)によれば、スペース七番のレンタルキッチンはレンタル料が1時間4,400円、2つの会議室はいずれも1時間3,300円で、利用可能時間は9時から21時(土曜・日曜は18時まで)、最小1時間・最大8時間の利用とされていた
3. 内装費と設備費の一部をクラウドファンディングで集めていること。 同紙(2022年5月)は、開業前の時点で5月20日までクラウドファンディングを行っているとし、集まった資金は内装費や設備費などに充てるというと書いている。同紙は阿部充朗の言葉として、このまちを盛り上げる1000人の仲間を募ることを目標にしていると伝えている
4. 喫茶店の売値。 同紙(2022年6月)によれば、開業時の「大人のお子様ランチ」は1,500円、「プリンアラモード」は1,000円、コーヒーはSサイズのブレンドが400円と450円である
稼ぎ方についての説明は、会社化の時点で記事に残っている。 サカエ経済新聞(2018年)は地の文で、財源の中心を、再開発施設の一部の店舗床を所有し運営することに置くとしている。 同紙は続けて、名畑の発言として、公共空間を活用したマルシェ、エリアセキュリティー、エネルギー事業などを考えていると述べたことを伝えている。
真似するなら最低何が必要か
出典から取り出せるのは6つである。
1. 構想を先に作り、あとで参照できる形にしておくこと。 real local 名古屋(2022年)は名畑の発言として、想定外の困難に遭遇したときの羅針盤が最初に作った構想であり、判断の拠り所になったと述べていることを伝えている。サカエ経済新聞(2018年)も地の文で、構想ができてからは歩道拡幅の社会実験をはじめとするたくさんのアクションが起きたと書いている
2. 既にあった地域組織を残したまま、事業体を足すこと。 前節のとおり、会社は町内会・まちづくり協議会・協同組合が主体となって作られており、同紙によれば名畑は、協議会がビジョンを描き、会社が事業部隊の役割を果たす分担を語っている。同紙はまた、名畑が、このまちは町内会と繊維産業を中心とした協同組合が両輪で暮らしや営みを支えてきたとし、以前からある仕組みを続けていくためにも地域組織の手伝いができればと述べたことを伝えている
3. 床を持つこと。 前節のとおり、会社は商業エリアのテナント企画と店舗部分の管理を担い(サカエ経済新聞・2021年4月/2022年5月)、財源の中心も、2018年時点では店舗床を所有し運営することに置くとされていた(同・2018年)
4. 地区の歴史から形を借りること。 サカエ経済新聞(2022年6月)は、運営を担当する木場友希乃の説明として、江戸時代の名古屋の城下町で街区の中央の空間がコミュニティスペースの役割を果たしていたことになぞらえ、現代版の会所のようなオープンスペースとして喫茶店を開いたことを伝えている。同紙によれば、床の升目模様も城下町の「碁盤割」と呼ばれる町割をイメージしている
5. 小さく続く仕掛けを別に持つこと。 サカエ経済新聞(2024年)によれば、都市農業プログラム「ゑびす菜園」は会社が企画して2021年から取り組むもので、参加するのは地区の住民と飲食店・商店のオーナーや従業員、その家族などである。バケツを鉢に使い、ビルの屋上やベランダ、住宅や飲食店の軒先といった「まちのスキマ」で作物を育てる方式で、同紙は2024年6月1日のワークショップに個人・グループ合わせて約10組が参加したと書いている。同紙(2021年)は、プログラム第1弾の収穫について、ワークショップ開催時は40〜50キロの収穫を想定していたが最終的な収穫量は14キロ程度になったと書いており、担当の阿部充朗の説明として、バケツが置かれた場所の日照量や日々の水やりの量・頻度の差が影響したと考えられると伝えている
6. 地区の外の相手と組む場を、別に用意すること。 サカエ経済新聞(2020年)によれば、地区を舞台に新しい技術やアイデアを実証・実装するエリアプラットフォーム「N2/LAB」が7月7日に立ち上がり、事務局は錦二丁目エリアマネジメントのほか NPO 法人など全4者である。同紙は、名古屋市などの行政、地縁組織、NPO法人、企業や個人事業主、大学などが関わると書いている
確認できないのは、事業費と会社の収支、再開発前後で地区の事業所や居住者がどう変わったかを示す数値、および会所と路地の利用実態を第三者が測った記録である。
今どうなっているか
2026年8月時点で確認できた最も新しい記録は、名古屋市のページである。 名古屋市は、都市再生特別措置法第118条第1項の規定により錦二丁目エリアマネジメント株式会社を令和3年4月28日に都市再生推進法人に指定したと掲載しており、このページの更新日は2025年11月11日である。同市の再開発事業のページ(更新日2025年10月17日)は、錦二丁目7番地区市街地再開発事業の進捗を平成25年3月の準備組合設立から、平成29年2月の都市計画決定、平成29年11月の組合設立認可・事業計画認可、平成31年3月の建築工事着手、令和4年3月の工事完了公告までの段階で示している。いずれも和暦のまま写した。
報道でいちばん新しいのは2024年である。 サカエ経済新聞(2024年6月6日)は、6月1日に常瑞寺でサツマイモの苗植えワークショップが行われ、個人・グループ合わせて約10組が参加したと伝えている。同紙は阿部充朗の発言として、毎回参加する人たちもいれば今年初めて参加する人もいて、継続によって少しずつ取り組みが広がってきていると感じると述べたことを伝えている。同紙によれば、栽培・収穫したサツマイモは芋焼酎の原料となり、九州の蔵元での仕込みを経て芋焼酎になって戻ってくる。
拠点は2022年に開いている。 サカエ経済新聞(2022年6月11日)は、喫茶店「喫茶七番」が6月11日にオープンしたと伝えており、同店が位置するのは3月に竣工した商住複合施設「オリマチ錦」の商業エリアで、四方の路地からつながる小さな広場に店の入り口があると書いている。同紙によれば、広場に面する円形カウンターの天板には、以前にこの地区にあったビル内の施設の壁面に描かれていたフレスコ画が再利用されている。
示された時期は、出典ごとにずれている。指している節目も揃っていない。 2018年の記事は2021年にオープン予定と書き、2020年の記事は2022年春完工予定と書き、2021年4月の記事は施設完成が2022年3月・店舗区画完成が2022年6月の予定と書き、名古屋市は令和4年3月の工事完了公告を記録している。discrepancies に並置した。
否定的な報道は、今回探した範囲では見つからなかった。 サカエ経済新聞は地区の空洞化と、それにともなって一時は治安も悪化したという会社担当者の説明を書いているが、これは事業の前の状態についての記述である。中日新聞は robots.txt が claudebot を拒否しており(reference/media.json・2026-08-18 実測)、報道による検証はサカエ経済新聞と real local 名古屋の範囲にとどまる。
出典
- 大都市インナーシティの再生に向けた建築・都市空間の計画・デザイン手法 : 名古屋市中区錦二丁目のケース・スタディを通じて — 旭硝子財団助成研究成果報告(2011)
- 都市の木質化プロジェクト(4)まちづくりと都市の木質化 : 名古屋市中区錦二丁目長者町における試み — 木材工業(日本木材加工技術協会)(2012-04)
- 「錦二丁目エリアマネジメント」会社化お披露目 街に15年携わった女性が社長に — サカエ経済新聞(2018-11-23)
- 錦二丁目・長者町地区のまちづくり : 自律発展的まちづくりプロセスの構築に向けて — 建築とまちづくり(新建築家技術者集団)(2018-10)
- 錦2丁目でエリアプラットフォーム設立 街に良いこと前提に「リアルな街の実験場」 — サカエ経済新聞(2020-07-27)
- 錦二丁目の商住複合施設のテナント募集 「住む人働く人を幸せにする店」求める — サカエ経済新聞(2021-04-28)
- 錦二丁目で展開中の都市農業プログラム 6月に苗植えしたサツマイモを収穫 — サカエ経済新聞(2021-11-10)
- 錦二丁目に現代版「会所」 喫茶店と貸しスペースを新たなまちの交流拠点に — サカエ経済新聞(2022-05-09)
- 錦二丁目にまちの拠点「喫茶七番」 路地の先の「会所」にコーヒの香り — サカエ経済新聞(2022-06-11)
- 【名古屋市】 まちの人たちの夢が結実 「喫茶/スペース七番」へようこそ! — real local 名古屋(2022-08-19)
- 錦二丁目7番地区 第一種市街地再開発事業 — 再開発コーディネーター(再開発コーディネーター協会)(2023)
- 錦二丁目で都市農業プログラム「ゑびす菜園」始まる 飲食店、商店が参加 — サカエ経済新聞(2024-06-06)
- 錦二丁目7番地区市街地再開発事業 — 名古屋市(2025-10-17)
- 都市再生推進法人等について — 名古屋市(2025-11-11)
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