空きビルを宿にした一級建築士が、そのまま地下駐車場と公園の管理まで引き受けた
ワカヤマヤモリ舎
2014年のリノベーションスクールから、記録は2024年まで続く。2016年の記事は空きビルの宿への改修を、2018年の記事は都市再生推進法人の指定と地下駐車場の管理を、2023年の記事は大新エリア全体の変化を扱っている。
何をしたか
和歌山市の大新エリアで、空室が目立っていた5階建てのビルの一部を宿に改修し、そこを起点にエリアへ広げた。ニュース和歌山によれば、和歌山市が2013年度から開くリノベーションスクールの2期生だった一級建築士の宮原崇が、同紙が2014年11月とするスクールで古ビルのゲストハウスへの改修を提案し(開催月は出典間で10月と11月に割れている。discrepancies に並置した)、グループのメンバーらで遊休不動産を再生してまちづくりにつなげる「ワカヤマヤモリ舎」を立ち上げ、その第一歩としてゲストハウスRICOをつくった。 改修は昨年10月から床張りやペンキ塗りのワークショップを開き、市民と自らの手で行ったとされる。その後、同社は公園の地下駐車場の管理まで引き受けている。
誰が始めたか
代表取締役は宮原崇である。LIVING和歌山の2023年の記事によれば、和歌山市出身の一級建築士で、地元での独立を考えつつ「第2回リノベーションスクール@わかやま」に参加してRICOを設計・運営した。同記事は宮原麻里についても、兵庫県西宮市出身で大阪・東京で商業施設のコンサルティングやプランニングを手掛けたのち和歌山市に移住し、RICOの立ち上げから関わったと書いている。
ただし出発点は市の側にある。 ニュース和歌山によれば、リノベーションスクールは和歌山市が空き物件の活用で市街地の活性化を目指して開いたもので、同記事は2期生がゲストハウスを、3期生が日本酒バーを開くことを並べて報じている。同社はその制度から出てきた1つである。
対象となったビルについて、LIVING和歌山は「ユタカビル」という名で呼び、和歌山市のリノベーションスクールで事業計画が実事業化された2例目だと書いている。
なお、同じ人物の姓が出典間で異なる。 2016年のニュース和歌山は「橘麻里マネジャー」と書き、2023年のLIVING和歌山は「宮原麻里さん」と書いている。同一人物かどうかを断定できる記述は、今回の出典には無い。
いくらかかったか
改修費も事業費も、今回の出典からは確認できなかった。 funding_scale は unknown_fields に挙げている。
出典から分かるのは費用を下げる作り方のほうである。ニュース和歌山は、宮原がデザインを手がけ、床張りやペンキ塗りのワークショップを市民とともに行ったこと、壁は既存のコンクリートを生かし、カウンターやランプは廃材を再利用したこと、解体中の家で処分されかけていた家具を譲り受けて並べたことを書いている。同記事は橘麻里マネジャーの「建物だけでなく、物も捨てずにリノベーションしています」という言葉を伝えている。
真似するなら最低何が必要か
出典から取り出せるのは5つである。
1. 提案の場を先に用意すること。 和歌山市はリノベーションスクールを2013年度から開いており、同社はそこで出た提案を事業化したものである。 ニュース和歌山は、3期生が日本酒バー「水辺座」を今春オープンさせると並べて書いている(同記事の掲載時点ではどちらも開業前である)。一社を育てる話ではなく、複数出てくる仕組みの話である
2. 1棟の中を用途で積むこと。 RICOは5階建てビルの一部で、1階が受付とカフェを兼ねたラウンジ、5階がゲストハウス(相部屋と個室、共同のシャワールーム・洗面室で最大37人)。2階はまちづくりに関心のある若者や学生が共同で暮らすアパートに改修したとされ、同記事は1階の空き店舗だった場所に食堂やシェアオフィスを開くことを「今夏」の予定として書いている
3. 改修に住民を入れること。 前節のワークショップがそれにあたる。費用と当事者を同時に確保する手である
4. 公的な位置づけを取りに行くこと。 ニュース和歌山の2018年の記事によれば、県内初の都市再生推進法人が和歌山市に8団体誕生し、同社もその1つである。指定されると市が立てる都市再生整備計画の策定や見直しに参画でき、公共空間を使った活動がしやすくなる。市都市再生課は「行政は営利活動ができないが、公的位置づけを与えた推進法人は公共空間でできる」と述べている
5. 稼げる公共施設を組にすること。 同記事は、同社が4月から地元企業と共に大新公園の地下駐車場を管理するとし、利用促進策として地上の公園で自転車を貸し出すことや、店が入る仮設コンテナを持ち込んでのマルシェ開催を構想していると書いている
確認できないのは、改修費、宿の稼働率、そして地下駐車場の管理でいくら入っているかである。
今どうなっているか
2026年8月時点で確認できた最も新しい記録は、和歌山市の令和6年10月2日更新のページである。市内の都市再生推進法人を国内トップの13団体とし、同社の事業を「大新地下駐車場の指定管理開始に伴う大新公園の利活用、公園を地域の防災拠点として管理・運営」と記している。2018年の記事が「4月から…管理」と予定として書いていた地下駐車場の管理は、市の記載では指定管理として始まっている。
エリアの側については、LIVING和歌山が2023年の記事で、大新エリアを「中心市街地の空洞化が叫ばれる和歌山市で“最も勢いがあるまち”といっても過言ではありません」と書いている。これは同紙の評価である。 同記事は、江戸時代は商業の中心地、戦後は繊維関係の問屋が軒を連ねてにぎわい、高度経済成長期に入ると暴力団が事務所を構えて環境が一変したという経過を置いたうえで、いま新店が続々と開き、若者がイベントを開き、外国人観光客が宿泊していると書いている。
同社自身の展開も続いている。 和歌山経済新聞は2019年に、RICOの1階にバー&ダイニング「ウナラマデリコ」が開いたことを報じ、見出しに「ゲストハウス1階に交流の場」と置いた。同記事の本文が書いているのは運営者の願い(「止まり木」になってほしい、食を通じたコミュニケーションが生まれる場にしていければ)であって、そうなったという記述ではない。 交流拠点になっていると事実として書いているのは LIVING和歌山の2023年の記事で、19年に1階にカフェ・バー&ダイニングが開業し、旅人と地元の人たちの交流の場にもなっていると述べている。
否定的な報道は、今回探した範囲では見つからなかった。今回robots を確認して取得できた和歌山県の媒体は LIVING和歌山・ニュース和歌山・和歌山経済新聞の3社で、他は当たっていない。 CiNii には同社を扱った書誌が1件も無い。
出典
- リノベーションで市街地再生 — ニュース和歌山(2016-01-09)
- 和歌山にバー付きゲストハウス 若手有志とビルオーナーが一丸となって開業へ — 和歌山経済新聞(2016-01-12)
- 旅人とまち つなぐ宿 和歌山市 ゲストハウス2軒新たに 地域に根付いた運営めざす — ニュース和歌山(2016-05-07)
- 官民協働でまちなか再生 和歌山市の8団体 推進法人に — ニュース和歌山(2018-01-20)
- 和歌山にバー&ダイニング「ウナラマデリコ」 ゲストハウス1階に交流の場 — 和歌山経済新聞(2019-05-02)
- 「ゲストハウスRICO」を起点ににぎわう大新エリア — LIVING和歌山(2023-03-22)
- 都市再生推進法人について(和歌山市の指定13団体の一覧) — 和歌山市(2024-10-02)
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