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建物の高さや色ではなく「美の原則」8つで開発と個別に交渉する条例を作った

真鶴町まちづくり条例

日本 / 神奈川県 / 足柄下郡真鶴町

建物の高さや色ではなく「美の原則」8つで開発と個別に交渉する条例を作った
© 全国町村会 — この写真が載っている記事

開始年は出典から確認できず、記録は1994年から2024年にわたる。2003年の論文は美のリクエスト53件を数え上げ、2005年には日経アーキテクチュアがマンション計画による揺らぎを景観法の特集で扱った。2024年の学会報告は地域アイデンティティの面から評価している。

何をしたか

神奈川県真鶴町が、開発を数値だけで縛らず、抽象的な「美の原則」を掲げて開発ごとに個別に協議する条例を作った。都市計画論文集に載った2003年の論文によれば、条例は用途・容積率・建物の高さ・植栽面積といった数値の基準(土地利用規制規準)を別に持ちながら、数値では届かない「美」の実現のために「場所・格づけ・尺度・調和・材料・装飾と芸術・コミュニティ・眺め」の8つの美の原則を定めている。この8原則には規則によって「美の基準」として69のキーワードが割り当てられ、開発の協議は「美の基準リクエスト・美の基準調書」という書式を通じて行われる。つまり建物を建てたのではなく、建て方を決める手続きを作った事例である。

誰が始めたか

真鶴町である。1994年に専門誌『計画行政』へ条例の解説を書いたのは、真鶴町都市計画課兼まちづくり係の職員だった。この出典は町の側が書いたものなので from_operator: true を申告している。

条例そのものの制定年は、今回の4本の出典のいずれにも4桁の西暦として書かれていなかった。推測で埋めず start_year は空欄とし、unknown_fields に申告した。

いくらかかったか

確認できなかった。 条例の運用にかかる人件費や協議の費用は、今回の出典に金額として出てこない。

ただしこの事例の費用は建設費ではなく手間である。2003年の論文が数えた美のリクエストは53件で、1件あたり最大31・最小4、平均およそ13のキーワードが使われている。開発1件ごとに13項目前後の協議を積み上げる運用が、この条例の実際のコストにあたる。

真似するなら最低何が必要か

1. 抽象的な原則と、それを翻訳する語彙の両方。 8つの原則だけでは協議にならず、69のキーワードだけでは何のための基準か分からない。2層になっていることがこの仕組みの要点である
2. 数値の基準を別に持つこと。 用途・容積率・高さ・植栽面積は事前確定の数値で押さえ、数値で届かない部分だけを協議に回している。全部を協議にすると事業者が予見できない
3. 協議を書式に落とすこと。 「美の基準リクエスト・美の基準調書」という形が残るので、あとから運用実態を数えられる。2003年の論文が53件を分析できたのは、この書式があったからである
4. 使われない基準が出ることを織り込むこと。 69のうち7つは一度も使われていない。基準を作れば使われる、とはならない

確認できないのは、協議に要する職員の体制と時間、事業者側の負担、そして協議が不調に終わった場合の扱いである。

今どうなっているか

2026年8月時点で確認できた最も新しい記録は、2024年12月の日本観光研究学会全国大会での報告である。東洋大学大学院の研究者が、この政策が地域景観の保全、生活環境の向上、地域アイデンティティの強化にどう寄与しているかを、住民の環境満足度・地域への愛着・連帯感の面から分析している。30年前の条例が、いまも研究の対象として扱われている。

一方で揺らいだ時期もある。 日経アーキテクチュアは2005年6月27日号で「『美の条例』を揺るがすマンション計画」を扱った。掲載号の特集名は「紛争多発、守れ景観!——景観法で動き出すデザインや高さの規制」である。なおこの出典は CiNii Research の書誌ページから確認したもので、本文は読んでいないabstract_only: true)。記事の中身がどう書かれていたかはここに書けない。書誌から確実に言えるのは、条例が揺らいだと専門誌が見なす出来事が2005年にあった、ということだけである。

2003年の論文は、事前確定的な基準を持たずに個別の協議で最適解を求める方式について、制度設計上の課題を明らかにすることを目的としていた。この方式が手放しで評価されてきたわけではない。

出典

  1. 地方の計画 真鶴町まちづくり条例 — 計画行政(日本計画行政学会)(1994-09-15)
  2. 個別協議方式による開発コントロールに実態と課題 真鶴町まちづくり条例の美のリクエスト方式を事例として — 都市計画論文集(日本都市計画学会)(2003-10-25)
  3. 「美の条例」を揺るがすマンション計画--神奈川県真鶴町 — 日経アーキテクチュア(CiNii Research の書誌ページ経由)(2005-06-27)
  4. 「美の条例」政策と地域アイデンティティの強化:―真鶴町における日常生活の美の再発見― — 日本観光研究学会全国大会学術論文集(2024)

最終確認日 2026-08-17

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