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丘のスタジアムに福祉と農園を混ぜて365日使う場にした

里山スタジアム

日本 / 愛媛県 / 今治市

丘のスタジアムに福祉と農園を混ぜて365日使う場にした
© 日経クロストレンド — この写真が載っている記事

2014年に岡田武史がオーナーに就任し、2023年1月29日に里山スタジアムが開業した。2024年1月時点で、カフェ・福祉事業所・ドッグラン・農園・ビオトープを敷地内に配している。

何をしたか

愛媛県今治市の丘に建てられたサッカースタジアムと、その敷地を使ったまちづくり。運営するのは株式会社今治.夢スポーツで、2014年に岡田武史がFC今治のオーナーに就任している。スタジアムは2023年1月29日に開業し、同年度からFC今治の本拠地になった。開発コンセプトは名前のとおり「里山」で、日経クロストレンド2023年3月29日の記事は、自然と人が共生し、サポーターや地域の人々の心の豊かさにつながる場所にする、と伝えている。岡田氏は、地域名を冠したプロサッカーチームは地元の人たちに愛されなければならず、人口減少で町がさびれては元も子もないとしたうえで、「365日、全国、全世界から人が集まり、生き生きと過ごせる『里山ビレッジ』をつくろうと考えた」と述べている(日経クロステック2024年1月19日)。敷地には、カフェと福祉事業所を併設した「里山サロン」、ドッグラン、子どもや高齢者のデイサービス、農園、ビオトープが置かれている。雨水を地中にゆっくり浸透させる緑溝(バイオスウェル)をスタジアムの周囲に回し、植栽とピッチの散水には井戸水と雨水を使う仕組みを入れている。

誰が始めたか

民設民営である。 土地は今治市が無償で貸し、建設費は運営会社の今治.夢スポーツが用意した。

きっかけは競技の要件だった。日経クロストレンドによれば、それまでの本拠地は観客席5,000席で、J2が求める1万席、J1が求める1万5,000席の基準を満たしておらず、ナイター用の照明も不十分だった。昇格するには勝つだけでは足りないという事情から新スタジアムの構想が始まり、着工予定は感染症の流行で一度延期されている。

設計・建設は梓設計、りんかい日産建設、高野ランドスケーププランニングが担い、サポーターや地域の人々とクラブを結ぶコミュニケーションのデザインには松山のデザインスタジオ NINO が加わった。建設を担ったのは今治.夢スポーツの子会社である今治.夢ビレッジである。

「里山」という言葉は後から出てきたものである。 同記事によれば、企業理念(次世代のため、物の豊かさより心の豊かさを大切にする社会創りに貢献する)を掲げる同社が、外部識者の助言も入れて開発メンバーで議論を重ねた結果、心の豊かさにつながる言葉として「里山」が出てきたという。

いくらかかったか

総額およそ40億円。 その内訳を岡田武史氏が POTLUCK YAESU の取材で明かしている。

- エクイティ(出資)で15億7,000万円を同氏が集めた
- 愛媛銀行などの金融機関から20億円ほどを借り入れた
- 土地は今治市から無償で借りている

同氏は、あまり公金には頼らなかったと述べ、その理由を2つ挙げている。まだ税金を注ぎ込む事業と認めてもらえなかったこと、そして自分たちで尖ったことをやりたかったことである。そのうえで自治体とは非常に良い関係でやっているとも述べている。

funding_scaleunknown_fields のままとした。40億円という総額は出典にあるが、年間の運営費や収支は確認できていないためである。

真似するなら最低何が必要か

1. 自前で資金を集められること。 出資15億7,000万円と借入20億円を自ら組んだうえで、土地だけ自治体から無償で借りている。公金に頼らない代わりに、返済の責任は自分たちが負うという形である
2. 造り込まないこと。 梓設計の永廣正邦氏は、ローコストでもにぎわいを生み、造り込まずに「余白」を生かすという新しい方法を実践しており、周囲に開かれていて誰もが気軽に立ち寄れるようにしたと述べている
3. 試合以外の日に人が来る理由を敷地に置くこと。 カフェと福祉事業所を併設した「里山サロン」、複合福祉施設「きとなる」、ドッグラン、子どもや高齢者のデイサービス、農園、ビオトープ。スタジアムの土手には畑がある
4. 食べ物を敷地内で回すこと。 「里山ファーム」で米や野菜を育て、その食材を「里山サロン」で出す
5. 理念だけでなく数字を追うこと。 岡田氏は、理念を実現するためには儲けなくてはならず、単体で利益の出ない活動もやるが全体で黒字にならなければ給与も払えないと述べている
6. 雨水をその場で処理する仕組み。 外構の雨水を地中にゆっくり浸透させる緑溝(バイオスウェル)をスタジアムの周囲に回し、植栽とピッチの散水には井戸水と雨水を使う

確認できないのは、年間の運営費と収支、借入の返済計画、福祉事業所やデイサービスの運営主体である。

今どうなっているか

2026年8月時点で確認できた最も新しい記録は、2024年3月29日の POTLUCK YAESU の取材である。スタジアムは単なるスポーツ施設ではなく、衣食住を保障し合う「共助のコミュニティ」を目指すと岡田氏は語り、宿泊施設や美術館の建設も構想していると述べている。

開業時の数字は出典にある。 開幕戦の2週間前、満員まで1,300人足りないという報告が出たため、社員1人あたり10枚の手売りを呼びかけたところ、チケットは4日前に完売し、当日は立見席も売って収容5,316席のところに歴代最多の5,424人が集まった。競技の成績としては、2023年のJ3リーグで4位だった。

岡田氏は、変化を受け流していた人たちが地域が変わる様子を体感して自分たちのまちに誇りを持ち始めたとし、シビックプライドとスポーツチームは相性がよいと述べている。同氏は今治の人口を15万人とし、2023年版の「住みたい田舎ベストランキング」で該当部門の全世代1位になったことにも触れている。

出典の性格について明記しておく。 日経クロストレンドと日経クロステックの記事は途中から有料であり、ここに書いたのは無料で読める範囲に限られる。POTLUCK YAESU の記事は岡田氏本人へのインタビューであり、事業の説明は当事者の言葉にもとづく。独立した第三者による検証や、否定的な報道は、今回探した範囲では見つからなかった。

出典

  1. サッカーFC今治の新競技場 「成長する里山スタジアム」って何? — 日経クロストレンド(2023-03-29)
  2. サッカー元日本代表監督の岡田武史氏が語る、グリーンインフラなスタジアム — 日経クロステック(2024-01-19)
  3. サッカースタジアムを「共助のコミュニティ」に。岡田武史が描く地域創生のこれから — POTLUCK YAESU(2024-03-29)

最終確認日 2026-08-17

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