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誇りをつくるエネルギー・資源循環5万人未満

電気の来ない村に太陽光のマイクログリッドを引き、インド初の「太陽光村」を掲げた

Dharnai

インド / ビハール州(ジェハナバード県) / マクドゥンプル郡ダルナイ・パンチャーヤト、ダルナイ村

電気の来ない村に太陽光のマイクログリッドを引き、インド初の「太陽光村」を掲げた
© Mongabay India — この写真が載っている記事

2020年のNewsClickと2021年のモンガベイ・インディアが、それぞれ現地取材で発電網の機能停止を確認している。

何をしたか

インド・ビハール州ジェハナバード県のダルナイ村が、電気の来ない30年間を経て、環境NGOグリーンピース・インディアの資金と発案による百キロワットの太陽光マイクログリッドを引き、「インド初の完全太陽光村」を掲げた。

2014年7月20日に稼働を始めた発電網は、450世帯・住民2,400人分の家庭用電力、街灯60基、学校2校、診療所1か所、商業施設50か所への配電をまかない、農地には灌漑用の太陽光ポンプ10基が設置された。村電気委員会という住民の受け皿組織がつくられ、当時のビハール州首相も視察に訪れて称賛した。しかし2020年と2021年の現地取材では、電力棟が家畜小屋に転用され、太陽光の利用者が実質いなくなっていたことが伝えられている。

誰が始めたか

発案・出資したのは環境NGOのグリーンピース・インディアで、実施には2つの協力団体が関わった。 グリーンピース自身の発表(2014年7月20日)は、生計支援機関のBASIXと、ビハール州の再生可能エネルギー普及を支援するNGO・シンクタンクのネットワークCEED(環境エネルギー開発センター)の2団体が運営を助けたと書いており、両団体の役割分担までは記していない。モンガベイ・インディア(2021年12月17日)は、CEEDが住民に太陽光利用を促す活動を担ったと伝えている。

きっかけは、村が30年近く電気を持たなかったことである。 モンガベイ・インディア(2021年12月17日)によれば、ダルナイには1981年より前は電気が来ていたが、変圧器の故障や盗電などを機に接続が絶たれ、以後電気が届かなかった。同紙の取材に応じた住民(取材時72歳)は、稼働開始の5年ほど前に約45世帯が電力供給を求めて州の電力局に申請書を出していたと述べている。

村側の受け皿として村電気委員会がつくられた。 グリーンピースの発表は、Bishunpur Tolla地区の住民で同委員会の委員長を務めるカマル・キショール・プラサド氏の発言として、「今なら誇りを持って、ダルナイは革新の先頭に立っていると言える」(原文:now I can proudly say that Dharnai is a leader in innovation)と伝えている。

稼働の2週間後、州首相自らが視察に訪れた。 NewsClick(2020年10月20日)によれば、当時のビハール州首相ニティーシュ・クマールは1週間の前半に村を訪れ、「太陽光こそが唯一の解決策だ」(原文:Solar energy is the only solution)とグリーンピースを称賛する発言をした。同氏は2015年の州議会選で再選している。一方でモンガベイ・インディアは、開所式の場で一部の住民が石炭火力由来の系統電力(住民の言葉で asli bijli、本物の電気の意)を求め、太陽光(同 nakli bijli、偽の電気の意)に抗議したとも伝えている。

いくらかかったか

事業費として出典に出てくる数字は1つで、NewsClick(2020年10月20日)がおよそ3,000万ルピー(3クロール)という見積もりを伝えている。 他の出典にはこの金額の記載が無い。

資金の出し手はグリーンピース・インディアである。 同団体自身の発表は、発案と出資をグリーンピース・インディアが行ない、運営をBASIXが助けたとしており、州政府や中央政府からの補助は出典に出てこない。モンガベイ・インディア(2021年12月17日)は、事業の不調について取材した際、州政府の担当者が事業への政府の関与は無いとして回答を拒否したと書いている。ビハール州は別途、州の再生可能エネルギー開発機関BREDA(Bihar Renewable Energy Development Agency)を通じて屋根置き太陽光や太陽光ポンプの事業を進めているが、NewsClickによればこれはダルナイの事業とは別枠のCAPEX方式の事業である。

真似するなら最低何が必要か

1. バッテリーの更新費用を、稼働前から見込んでおくこと。 モンガベイ・インディア(2021年12月17日)の現地取材によれば、稼働から3年ほどでバッテリーの寿命が尽きたが交換されず、それ以降は発電網そのものが使われなくなった。屋根の太陽光パネルやCCTVなどの設備自体は残っていたものの、ある住民(村の商店主)は、もう誰も太陽光を使っておらず村の栄光は終わったと同紙に語っている。

2. 料金を、あとから来る系統電力と比べられる水準にすること。 NewsClick(2020年10月20日)とモンガベイ・インディア(2021年12月17日、ナーランダ大学のアヴィラム・シャルマ氏による2020年の調査を引用)はいずれも、太陽光の料金が1単位9ルピーだったのに対し、稼働から2年ほどで村に届いた火力系統電力は1単位3ルピーだったと伝えている。同調査によれば、太陽光の接続件数はダルナイ・パンチャーヤト内4村で2014年の225件から2016年には126件へ減った。

3. 孤立した自営線ではなく、いずれ来る系統電力との統合を最初から計画すること。 モンガベイ・インディアは、この事業から引き出せる教訓として、無電化村に系統電力が届く前提を欠いた自営型の太陽光事業は、系統電力の到達とともに設備と資金が無駄になりかねないと指摘している。同紙は、事業に関わった関係者の話として、配電会社側は2015〜16年の時点で太陽光を系統に統合する用意があったと伝える一方、住民側は1981年に系統電力を失ったときと同じことが起きるのではと懸念し統合に反対したとも書いている。

4. 村側の受け皿組織をつくっても、その先の権限と引き継ぎを明確にしておくこと。 稼働時には村電気委員会がつくられたが、2020年時点でNewsClickの取材に答えたのはパンチャーヤトの長(ムキヤ)であるアジャイ・シン・ヤダブ氏だった。同氏はバッテリーが無いために動いていないと認め手配を試みていると述べたが、停止してからの期間について住民の証言(2年以上)と自身の説明(1年)の食い違いを指摘されると、それ以上は答えなかった。

5. 開所式での政治家の称賛は、その後の維持費の担保にならないと見ておくこと。 ビハール州首相が自ら視察し称賛した事業であっても、モンガベイ・インディアの取材に州政府の担当者は事業への関与を否定した。NewsClickも、首相が2015年に再選したあとソーラー普及を特段進めた記録は無いと書いている。

否定的な報道に対する当事者の反論: CEEDのラーマパティ・クマール最高責任者はモンガベイ・インディアに、この事業を失敗と見なすのであれば「この村にもたらした社会的な変革を見誤ることになる」(原文:you fail to realise the social transformation the project brought in the village)と反論し、電力が届いていた期間に女性や子どもの生活・治安面での変化があったこと、事業がそもそも実証目的だったことを挙げている。同氏はまた、バッテリーさえ交換できれば復旧の余地があるとも述べている。

今どうなっているか

2026年9月時点で確認できた最も新しい記録は、2021年12月17日のモンガベイ・インディアの現地取材である。

同紙の記者が発電棟を訪れると、稲わらが積まれ、太陽光パネルの上のCCTVカメラは蜘蛛の巣に覆われ、パネルを支える金具は錆びていた。これより先、2020年10月20日のNewsClickの取材でも、書類上は100件超の接続が残るとされる一方、実際に電力を受け取っている世帯は無く、発電棟の建物2棟が住民によって水牛の小屋として使われていることが確認されている。両紙とも、家庭用の太陽光マイクログリッドとしては機能していないと伝えている点で一致する。

ただし全てが止まったわけではない。 モンガベイ・インディアによれば、農地に設置された太陽光の灌漑ポンプの一部は、稼働時に無償で受け取った住民自身の管理のもとで、取材時点でも使われ続けていた。日中しか使わないためバッテリーが要らず、家庭用の発電網より不具合が少なかったという。

復旧の話し合いは続いているが、決定には至っていない。 モンガベイ・インディアは、事業の復旧について住民組織と行政の間で話し合いが持たれることがあるとしつつ、これまでのところ具体的な決定はされていないと書いている。2021年12月より後の続報は、今回参照した出典の範囲では確認できなかった。

出典

  1. Dharnai Goes LIVE Powered by Greenpeace's First Solar Microgrid — Greenpeace India(2014-07-20)
  2. How Dharnai Left 30 Years Of Darkness And Became The First Fully Solar Powered Village In India — The Better India(2014-08-21)
  3. Bihar Elections: India's First Solar-Powered Village Now has a Defunct Power Station — NewsClick(2020-10-20)
  4. The downfall of solar energy at Dharnai, Bihar's first solar village — Mongabay India(2021-12-17)

最終確認日 2026-09-03

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