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住民が決める住まいと暮らし(住宅・医療・福祉・子育て)25万超

36万筆を集めて住民投票で勝ったが、4年たっても実行されていない

Deutsche Wohnen & Co enteignen

ドイツ / ベルリン州 / ベルリン

36万筆を集めて住民投票で勝ったが、4年たっても実行されていない
© Der Tagesspiegel — この写真が載っている記事

36万筆の署名を経て2021年9月26日の住民投票で59.1%が大手不動産会社の社会化に賛成した。2022年12月に州の専門委員会が中間の判断として可能だとし、2023年に適法性を確認したが、2024年4月時点で実行の見通しは立たず、2025年9月時点でも社会化は行われていない。運動側は2度目の住民投票に向けて自ら法案を書き、2025年9月26日に公表した。

何をしたか

ベルリンで、大手不動産会社が持つ住宅を社会化する(vergesellschaften)ことを、住民投票で決めさせた市民発意の取り組み。36万筆の署名を集めたうえで、2021年9月26日の住民投票にかけ、59.1%の賛成で成立した(taz 2025年9月26日)。ドイツ基本法にはこれを可能にする条文があるが、taz によればこれまで一度も適用されたことがない。

決めたあとが、この事例の中身である。 2022年12月、州政府が設けた法律の専門委員会は、不動産会社の社会化はベルリンで可能だとする中間の判断を示した(Der Tagesspiegel 2022年12月8日)。委員会は元法相を長とする構成で、2023年に事業の適法性を確認している。

それでも実行されていない。 2024年4月、taz は、投票から2年半が経ち専門委員会が適法と判断したにもかかわらず、州政府による具体的な実行の見通しは立っていないと報じた。2024年9月、nd は、投票から3年が経っても住宅会社は1社も社会化されていないと書いている。

2025年9月26日、運動側は2度目の住民投票に向けて自ら書いた社会化法の案を記者会見で公表した(taz 2025年9月26日)。同記事は、キリスト教民主同盟と社会民主党が住民投票のあと「枠組み法」を作ってきたが、それは社会化を可能にするものではない、と書いている。同記事の読者の投稿欄には、専門委員会が中心的な論点で全員一致ではなかったという批判も載っている。

誰が始めたか

市民発意の団体「Deutsche Wohnen & Co enteignen」(略称 DW Enteignen)である。 名前は、ベルリンで最大の住宅会社だったドイチェ・ヴォーネンを名指ししている。運動は借家人の側から出ており、taz と nd はこの団体の広報担当(Isabella Rogner、Camel Fuhg)を当事者として繰り返し引用している。

手続きは3段構えだった。 署名を集め、住民投票にかけ、可決させる。36万筆の署名を集めたうえで、2021年9月26日の住民投票で59.1%の賛成を得た(taz 2025年9月26日)。

受け止める側はベルリン州政府である。 州は投票後に法律の専門委員会を設け、2022年12月に社会化が可能だとする中間の判断を得た(Der Tagesspiegel 2022年12月8日)。委員会は元法相を長とする構成だったと taz は書いている。ただし実行の主体である州政府(キリスト教民主同盟と社会民主党の連立)は、投票の結果をそのまま実行してはいない。

いくらかかったか

運動側の活動費は、taz によれば2023年9月、法案づくりのためにクラウドファンディングで8万ユーロを集めたとある。 一方、社会化にかかる補償額の確定値は、参照した4本のどこにも書かれていない。

金額が確定していないこと自体が、この事例の争点の一部である。社会化を実際に行うには対象と補償を定める法律が要るが、その法律はまだ無い。 2025年9月26日に運動側が公表した法案について、taz は、補償の総額は80億〜180億ユーロの幅に収まると運動側が見込んでいること、ただし台帳が無いため最終的にどの住宅が対象になるかは不明であることを書いている。

真似するなら最低何が必要か

この事例で真似できる単位は、社会化という政策そのものではなく「決まったあとに何が起きるか」の見取り図である。

第一に、票を取るところまでを設計の終わりにしないこと。36万筆と59.1%を得てなお、4年間で1社も社会化されていない。 投票の可決は手続きの中間点だった。

第二に、適法性の確認を別に取ること。州が設けた専門委員会が2022年12月に可能だと判断し、2023年に適法性を確認した。この判断がなければ「そもそもできない」で終わっていた。 ただしそれでも実行には至っていない。

第三に、実行の主体が反対側にいる場合を想定すること。決めるのは住民投票だが、法律を作り執行するのは州政府である。両者が一致しない構図では、可決は執行を強制しない。

第四に、引き延ばしの形を見分けること。taz 2025年9月26日は、州の与党が住民投票のあと「枠組み法」を作ってきたが、それは社会化を可能にするものではないと書いている。枠組みだけ作って中身を入れない、という応じ方がありうる。

第五に、次の一手を自分で用意しておくこと。運動側は2度目の住民投票に向けて自ら法案を書いている。 相手の作業を待つのではなく、自分たちの案を持って次に進む形をとっている。

今どうなっているか

2026年8月時点で確認できたのは、2025年9月26日の taz の記事までである。

投票から4年、住宅会社は1社も社会化されていない。 2024年9月25日の nd は、2021年9月26日の住民投票が今日まで結果を伴っていないと書いている。2024年4月22日の taz は、専門委員会が適法と判断したにもかかわらず、州政府による具体的な実行の見通しは立っていないと報じた。同記事によれば、運動側は州が作ろうとしている枠組み法を「単なる目くらまし(reine Nebelkerze)」と呼んでいる。

枠組み法は成立していない。 taz 2025年9月26日は、州の与党(キリスト教民主同盟と社会民主党)が住民投票のあと「枠組み法」を作ってきたが、それは社会化を可能にするものではないと書いている。

運動は終わっていない。 運動側は2度目の住民投票に向けて自分たちで法案を書いている。同じ2025年の taz の記事には、専門委員会が中心的な論点で全員一致ではなく、必要性と比例性については活動側からのみ助言を受けたとする批判が、読者の投稿として載っている。

州政府側の言い分としては、2024年9月の nd が、建設担当の州大臣が枠組み法の実施を先送りするつもりはないと述べていたこと、鑑定が出るまで関係者に準備を求めていたことを伝えている。同記事によれば、進捗については同大臣の部局は所管の財務当局に委ねているとしており、財務当局はndの取材に対し、鑑定の発注はなお準備段階にあると答えている。

出典

  1. Zwischenerfolg für „Deutsche Wohnen & Co enteignen": Expertenkommission hält Enteignung von Immobilienkonzernen in Berlin für möglich — Der Tagesspiegel(2022-12-08)
  2. Deutsche Wohnen Enteignen: Kein Rahmen in Sicht — taz(2024-04-22)
  3. Enteignungsvolksentscheid Berlin: 59,1 Prozent sind nicht genug — nd(2024-09-25)
  4. Gesetz von Deutsche Wohnen enteignen: Die Utopie lebt! — taz(2025-09-26)

最終確認日 2026-08-17

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