市が技術系の企業と起業を集める法人と拠点をつくり、賃料を自前の収入にした
Ruta N
2009年に設けられ、2022年には55社の進出と3,316人の雇用が報じられた。2023年には2009年からの累計で22,486人の雇用という数字が出て、2024年の15年目には市長が2,000社超の創業を挙げた。
何をしたか
コロンビアのメデジンで、市が技術系の企業と起業を集めるための法人と拠点をつくった。
エル・コロンビアーノの2024年の記事によれば、Corporación Ruta N が設けられたのは2009年で、企業・大学・行政をつなぐ位置づけを与えられた。市街地に建てた拠点には、2024年時点で300社を超える企業が入居している。
やっていることは誘致だけではない。エル・コロンビアーノが2022年に伝えたところでは、地元の技術系企業804社の支援と、約140件の種銭の交付を同じ年に行なっている。拠点の賃料が自前の主たる収入源になっている点も、運営側の説明として記事に出てくる。
誰が始めたか
市が2009年に法人を作った。 El Colombiano(2020年8月31日)は、Ruta N が2009年11月11日付の私的な設立文書(acta privada)によって生まれ、いまメデジンの技術地区になっている市の北側に置かれたと書いている。
「無かった一つの環」として説明されている。 同記事は、2011年まで所長を務めた Fabio Andrés Montoya の言葉として、当時のアンティオキア県の県都が高度に工業化されていた一方で、姿を変えるためのデジタルの跳躍を強く求めていたとし、Ruta N はそれ以前から続いていた強い政策——「Medellín la más educada」や起業の各種の取り組み——に欠けていた環だったと伝えている。同氏によれば、これは知識にもとづく事業を通じて付加価値を生むために、科学・技術・イノベーションを進める道具である。
根拠になる条例は3年後に来ている。 同記事は、共同創設者で元所長の Juan Pablo Ortega が挙げたものとして、2012年の協定24号が「メデジン科学・技術・イノベーション計画2011–2021」を市の公共政策として採択したこと、そして2013年以降 EPM の剰余の最低7%を共同出資に充てると定めたことを伝えている。
統治の頂点に3種類の主体が置かれている。 同記事によれば、最高機関である社員総会はメデジン市・EPM・Tigo UNEで構成され、理事会は全部門を代表する9人の理事と2人の補欠からなる。元所長の Juan Camilo Quintero は同記事で、Ruta N が技術に強い組織であり、統治の形が伝統的に強く多様であったと述べている。
いくらかかったか
設立費・建設費といった「かかった額」は、参照した5本のどこにも書かれていない。 出典が書いているのは、毎年の財源の仕組みと、引き寄せた側の金額である。
- 公金の側は条例で比率が固定されている。 El Colombiano(2020年8月31日)によれば、2013年以降、EPM が通常の剰余から市に毎年渡す資金の最低7%が共同出資に充てられる
- 運営費は自前の賃料でまかなう建てつけになっている。 同記事で元所長 Juan Camilo Quintero は、Ruta N の運営が入居企業の払う賃料に依っており、そのおかげで市が回す7%が市内の事業へ直接向かうと述べている。同記事によれば、2019年の営業収入は710億9,700万ペソで、2018年比167.5%増だった
- その賃料が戻り切っていないことも同じ出典群にある。 El Colombiano(2022年12月13日)は、当時の所長 Iván Darío Castaño が、流行後に入居率は回復してきているが100%には達していないと述べたと書いている。同記事は、施設の賃貸が主たる収入源であると明記している
- 引き寄せた資本の額は年ごとに出る。 2022年は99億200万ペソのイノベーション資本(同2022年12月13日)。Semana(2023年4月14日)は、2009年からの累計として2,123億2,700万ペソを市に引き寄せたとしている
- 配った側の額は、部門ごとに1つだけ確認できる。 El Espectador(2022年2月21日)は、Ruta N の広報文にもとづき、創造・文化の分野向けの融資枠で13億3,830万ペソを出したと書いている
公金と民間投資の比率、優遇の総額、建物の取得費は、5本のどこにも書かれていない。
真似するなら最低何が必要か
1. 金の出どころを条例で固定すること。 El Colombiano(2020年8月31日)によれば、2012年の協定24号が科学技術の計画を市の公共政策として採択し、2013年以降、公営企業 EPM の剰余の最低7%を充てると定めた。単年度の予算措置ではなく、比率で決めている点がこの事例の骨である。
2. 運営費を自前の収入で持つこと。ただしそれは景気で揺れる。 同記事で元所長は、賃料で運営費をまかなうから公金は市内の事業へ直接向かえると述べている。その裏返しが2022年である。 El Colombiano(2022年12月13日)は、賃貸が主たる収入源であるのに入居率が流行前の水準に戻っていないという所長の説明を載せている。
3. 企業・大学・行政を統治機構の中に入れること。 2020年8月31日の記事によれば、社員総会はメデジン市・EPM・Tigo UNE、理事会は全部門を代表する9人と補欠2人で構成される。外部の助言機関ではなく、議決の場に3者が座っている。
4. 誘致だけで数えないこと。 El Colombiano(2022年12月13日)によれば、2022年の誘致は55社・雇用3,316人だったが、同じ年に地元の技術系企業804社の支援と約140件の種銭の交付を行なっている。Semana(2023年4月14日)は、13年間で3,682社の能力強化と527社への資金の供給があったとしている。
5. 数え方を先に決めること。 ここは出典どうしが揃っていない。 Semana(2023年4月14日)は「2009年から467社の技術系企業を通じて22,486人の雇用」と書き、El Colombiano(2024年11月25日)は市長の発言として「25,000人超の雇用」「2,000社超の創業」を伝えている。誘致した企業なのか創業した企業なのかが違う可能性が高く、同じ指標として並べられない。
6. 人が入れ替わっても続く形にすること。 2020年8月31日の記事は、この法人が理事会の8人が辞任し代表の Juan Vásquez が去った直後の状態にあると書き、元所長 Montoya の言葉として、街に語りかける主導の位置は保たれねばならず、先行きの確かさを与えることが要だとしている。2024年11月25日の記事では、市長 Federico Gutiérrez が、市長は来ては去るが Ruta N の DNA が街と人に残らねばならないと述べている。
今どうなっているか
2026年8月時点で確認できた最も新しい記録は、2024年11月25日の El Colombiano である。
15年目の数字は、市長の発言として出ている。 同記事によれば、市長 Federico Gutiérrez は15周年の催しで、市の科学・技術・イノベーションへの投資が2014年の域内総生産比0.7%から2%超になったとし、25,000人超の雇用、10億ドル超の外国投資、2,000社超の創業を挙げた。同氏は、この議論が一部の層のものであってはならず、地区に機会として届く必要があると述べている。
拠点には300社超が入居している。 同記事は、市の中心にある革新の複合施設に300を超える企業が入り、人工知能・エネルギー・保健・教育といった分野で技術を育てていると書き、これまで組んだ企業として SAP、Siemens、Hewlett-Packard、BBVA、Ceiba、Fortinet を挙げている。
先の予定は「これから」の形で書かれている。 同記事によれば、所長 Carolina Londoño は2024年から2028年の計画として5つの節目を挙げ、そのうちにコロンビアで初のイノベーション特別処理区域 Futumed と、起業向けの資金を動かす場 Medellín Venture Capital がある。同氏は、技術を人が理解し使わなければ事業は役に立たないとし、知識が研究所の中にとどまってはならないと述べている。 循環経済・生物工学・教育に取り組んでいるとも述べている。これらは実施済みの事実ではなく、この時点の計画である。
2020年の理事会の混乱について、その後を伝える記述は5本の中に無い。 El Colombiano(2020年8月31日)は理事8人の辞任と代表の退任を伝えているが、その後どうなったかを書いた出典は今回の範囲では見つからなかった。
出典の性格を明記しておく。 5本は El Colombiano 3本・El Espectador 1本・Semana 1本の3媒体で、掲載年は2020 / 2022 / 2023 / 2024 の4か年である。El Espectador(2022年2月21日)は Ruta N の広報文にもとづくと本文に明記しており、Semana(2023年4月14日)と2024年の記事の数字も運営側と市の側から出ている。 独立した第三者による検証は、2020年8月31日の記事に登場する Eafit の研究者と Ecsim の代表の評のほかには見つからなかった。
出典
- El sueño innovador en el que Ruta N ha marcado camino — El Colombiano(2020-08-31)
- Ruta N: La apuesta tecnológica por más de 900 emprendimientos en Medellín — El Espectador(2022-02-21)
- Con menos empresas atraídas que en 2019, Ruta N generó más empleos en 2022 — El Colombiano(2022-12-13)
- ‘Ruta N’ aportó 22.486 empleos en Startups y empresas de base tecnológica en Medellín — Semana(2023-04-14)
- “De nada sirve el proyecto si la gente no entiende la tecnología”: los desafíos de Ruta N en sus primeros 15 años — El Colombiano(2024-11-25)
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