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獲れた魚を売った金の4割を漁民に、36%を村の組織に分け、その取り分で湿地を守った

Tanguar Haor

バングラデシュ / シレット管区 / スナムガンジ県 タヒルプル郡・ダルマパシャ郡(タングアール・ハオル沿岸88村)

獲れた魚を売った金の4割を漁民に、36%を村の組織に分け、その取り分で湿地を守った
© Down To Earth — この写真が載っている記事

2018年3月にダウン・トゥ・アースが仕組みの評価を伝え、2020〜2021年にはThe Daily Starで元関係者による検証が続き、2024年1月には同紙が資源の減少と私物化への批判を報じた。開始から3年以上あとの評価・検証記事が複数年にわたって続いている。

何をしたか

スナムガンジ県のタングアール・ハオル(湿地)で、住民から取り上げられていた漁業権を許可制で住民に戻し、漁獲による収入を漁民40%・住民でつくる組織36%・政府24%に分ける仕組みを作った。ダウン・トゥ・アース(2018年3月27日)は、この配分が関係者との協議を経て決められ、住民組織の取り分は地域の開発に充てられると、学術論文(Ishtiaq Uddin Ahmad、ICIMOD刊)を引いて伝えている。The Daily Star(2020年8月16日、Irfanullah氏)によれば、村ごとの住民組織は2016〜2018年の「橋渡し期」に協同組合へと姿を変えた。

誰が始めたか

The Daily Star(2017年1月10日)によれば、政府は1999年にタングアール・ハオルを生態学的重要地域に指定した。The Daily Star(2017年8月8日、UNB特電)によれば、政府はIUCNの協力を得た10年計画を、第一期に63クロー・タカを充てる形で始め、地権を握っていたリース制度を打ち切り、2006年に県行政からIUCNに保護の権限を渡した。ダウン・トゥ・アース(2018年3月27日)によれば、事業を主導したのはバングラデシュ環境森林省で、資金はスイス開発協力庁、技術支援はIUCNバングラデシュ事務所が担った。前出のUNB特電は、IUCN自身の説明として、2006年から2016年まで政府・SDC・IUCNが地域住民とともにハオルを管理したとしていると書いている。

The Daily Star(2017年1月10日)によれば、ハオルを守る委員会自体は2006年より前の2003年に県行政によって作られていたが、記事は、この委員会が長年うまく機能してこなかったと書いている。同記事で環境団体サナムガンジ・パリベシュ・アンドロン代表のショフィクル・アラム氏は、住民による薪の伐採を当局が制御できずにいることと、IUCNが県行政と共同管理の構築に長年取り組みながら何も実現できていないことを述べている。

いくらかかったか

The Daily Star(2017年8月8日、UNB特電)によれば、政府とIUCNによる10年計画の第一期には63クロー・タカ(6億3,000万タカ)が充てられた。その後の局面や事業全体の総額は、参照した出典のどこにも書かれていない。

分かるのは金の流れの仕組みそのものである。ダウン・トゥ・アース(2018年3月27日)によれば、漁獲収入は漁民に40%、村の組織である中央共同管理委員会に36%、政府に24%が配分される。村の組織に渡った分は地域の開発に使われる。同記事によれば、ハオル周辺の世帯は、漁業以外にも小規模な商い・農業・養鶏・畜産・手工芸などの副収入で生計を立てており、なかでも漁業や船に関わる仕事は男性が、雑貨店は女性が中心だとしている。

真似するなら最低何が必要か

第一に、収入の配分先を数字で決めておくこと。ダウン・トゥ・アース(2018年3月27日)によれば、漁獲収入は漁民・村の組織・政府の間で40対36対24という具体的な比率に分けられている。割合が決まっていることで、村の組織の取り分がそのまま地域の開発費になる。

第二に、住民の代表を選挙で選ぶこと。同記事によれば、各階層の委員会で代表が民主的な選挙を通じて選ばれ、女性や専門家の参加も各階層で保証されている。The Daily Star(2020年8月16日、元IUCNバングラデシュ・プログラムコーディネーターIrfanullah氏の寄稿)は、この階層構造を村・ユニオン(郡下の行政単位)・ハオル圏の3層と説明している。

第三に、資源を使う権利を住民に戻すこと。同記事によれば、周辺住民は伝統的な非商業的漁法を受け入れる代わりに、決められた期間の漁獲権を確保している。

第四に、住民組織を法的な形に変えていくこと。The Daily Star(2020年8月16日、Irfanullah氏)によれば、2016〜2018年の橋渡し期に、村ごとの住民組織は「協同組合法(2001年)」のもとで協同組合となり、ハオル全体をまとめる中央協同組合の傘下に置かれた。

第五に、批判が出たときに答える窓口を用意しておくこと。The Daily Star(2017年8月8日、UNB特電)によれば、違法伐採の増加を巡ってIUCNが名指しで批判された際、IUCNの現地責任者ワヒドゥザマン・サルカル氏は、一部の者が不正な取締官と結託していると否定する説明を行っている。

今どうなっているか

2024年1月時点で確認できたのは、The Daily Star(2024年1月12日)の記事までである。同記事によれば、タングアール・ハオルは今も88の村・6万人超の暮らしを支えているが、プラスチック汚染・乱獲・雑草除去・森林伐採・土壌浸食といった複数の脅威にさらされ、漁業資源は年々減少しているという。地元の漁民の一人は、以前ほど魚が獲れなくなっていると同記事に語っている。

同記事によれば、環境団体「ドリトリ・ロッカイ・アムラ」のシャリフ・ジャミル幹事は、県行政・地元の業者・政治的な人物がハオルの管理不全の責任を負うべきであり、彼らが「自分たちの利益のために資源を私物化している」と述べている。これに対しスナムガンジ県庁の追加副長官(総務担当)モハマド・レザウル・カリム氏は、生態系を守るための取り組みを進めており、雨季前に規則の運用を始める計画だと同記事に語っている。この追加副長官の発言は、私物化の指摘そのものへの直接の反論ではなく、今後の対策についての説明である。

The Daily Star(2021年7月10日、Irfanullah氏)によれば、2019年1月以降、タングアール・ハオルを管理する正式な「事業」は無い状態が続いているが、村・中央の協同組合と地元行政は、それまでの仕組みの一部を自分たちの手で続けているという。同氏は同じ記事で、国連開発計画(UNDP)が地球環境ファシリティ(GEF)の資金を得て新しい事業の設計に入っていることに触れているが、これはあくまで計画段階の話であり、本文には採らなかった。2024年より後にこの仕組みの続報を確認できた出典は見つけられなかった。

出典

  1. Rampant felling of trees threatens Tanguar Haor — The Daily Star(2017-01-10)
  2. Tanguar Haor: Accusations fly as unique biodiversity comes under threat — The Daily Star(2017-08-08)
  3. Unique programme in Bangladesh shows the way to wetland management — Down To Earth(2018-03-27)
  4. Tanguar Haor: A paradise lost — The Daily Star(2024-01-12)
  5. Providing permanent support to the people of Tanguar Haor — The Daily Star(2020-08-16)
  6. Is a new vision possible for Tanguar Haor? — The Daily Star(2021-07-10)

最終確認日 2026-09-03

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