空き地を探す地図と持ち運べる畑で、遊休都市用地を市民農園に変え続けるしくみをつくった
3000acres
2014年にフィッツロイの空き駐車場で始まり、2019年の記事では開発業者・自治体・VicTrackとの連携が伝えられている。
何をしたか
メルボルンの3000acresは、空き地・遊休地を見つけて畑に変える仕組みをつくった。Greening the West(2015年5月3日)によれば、駐車場・空き区画・鉄道用地・道路の予備地・屋上・ラウンドアバウトなど、遊んでいる土地を人びとが地図に登録し、3000acresがそこを畑にする支援をする。最初の畑は2014年2月、フィッツロイの未使用の駐車場に開かれた。 同記事によれば、開発業者Neometroがアパート建設に着手する前の12か月間、この土地を無償で提供した。畑は地面に固定せず、高床式で組んだ容器を並べる「ノーディグ(無耕起)」の形にしてあり、土地が売却されても畑ごと別の場所へ移せる設計になっている。
誰が始めたか
創業の経緯には出典間の食い違いがある。 Greening the West(2015年5月3日)は、VicHealthの「Seed Challenge」への応募をきっかけに、Thomas Gooch、Chris Renkin、Kate Dundasの3名が2013年に共同で創業したと書いている。一方 Assemble Papers(2016年11月25日)は、スコットランド出身のランドスケープアーキテクトであるKate Dundasが2013年に創業したと書き、他の共同創業者には触れていない。両記事とも、ニューヨークの遊休地活用団体596acresから着想を得たとしている点は一致する。
現場の運営は複数の担当者が公表の場で語っている。Assemble Papers(2016年11月25日)では、プロジェクトマネージャーのPippa Frenchが、資金調達・賃貸契約・保険の手配や関係者どうしの橋渡しを担っており、それが無ければ人々が迷ったり行き詰まったりするような支援を提供する役割だと説明している。Greening the West(2015年5月3日)では、Executive OfficerのHannah Schwartzが、市民農園に計画許可を毎回取らせる規制を緩めるための働きかけを行っていると述べている。The Fifth Estate(2019年4月11日)では、General ManagerのMorgan Koegelが、都市農業への関心が自治体・開発業者・地域社会の側で高まっている時期にあると述べている。
いくらかかったか
具体的な金額は、参照した3本のどこにも書かれていない。
Assemble Papers(2016年11月25日)によれば、2013年にVicHealthがSeed Challengeキャンペーンを通じて種資金(seed funding)を提供したとされるが、金額は書かれていない。 同記事はまた、2016年12月2日を期限とするクラウドファンディングキャンペーンが新規プロジェクトのために行われていたとも書いているが、目標額・集まった額のいずれも記されていない。
金額の代わりに分かるのは、費用の多くが現金ではなく現物の提供で成り立っていることである。最初の用地はGreening the West(2015年5月3日)によれば開発業者Neometroが無償で貸し出したものであり、畑の設計・施工にはメルボルン大学の園芸専攻の学生が協力した(同記事)。Assemble Papers(2016年11月25日)によれば、Saxon Streetの畑はMoreland市が関わる協働であり、DealCorpは自社の大規模開発Polaris内に畑の用地を提供している。土地・労働力・専門知識のいずれもが、現金の支出ではなく提携先からの提供という形で費用の一部を肩代わりしている構図がうかがえる。
真似するなら最低何が必要か
1. 畑を土地に固定しないこと。 Greening the West(2015年5月3日)によれば、畑は高床式の容器に土を入れたノーディグ(無耕起)形式で作られ、土地の売却や開発の着手があっても畑ごと移設できる。 実際、最初のフィッツロイの畑はその後、近くのNapier Streetの空き地へ移された(同記事)。Assemble Papers(2016年11月25日)によれば、最初の畑(Condell Growers and Sharers Garden)はもとの用地から約1km離れた場所まで2度移設され、もとの参加者のおよそ半数を維持したという。
2. 土地を所有せず、仲介役に徹すること。 Assemble Papers(2016年11月25日)でプロジェクトマネージャーのPippa Frenchは、申込者の多くが積極的に動いており、3000acres側は主にアイデアの相談相手として後押しする役回りだと述べている。Greening the West(2015年5月3日)によれば、さらに土地所有権の確認方法・管理協定・土地所有者向けのリスク管理の手引き、保険・賃貸契約・計画許可の取得についての助言など、実務のひな型一式を提供することで、個々のグループが自分たちで手続きを進められるようにしている。
3. 土地を持つ側の種類を広げること。 Assemble Papers(2016年11月25日)によれば、3000acresは民間の開発業者(Neometro、DealCorp)に加え、ビクトリア州で2番目に大きな土地所有者とされるVicTrack(約300平方キロメートルを保有し、その70%が交通用地)や、水道事業者Melbourne Waterとも提携している。The Fifth Estate(2019年4月11日)によれば、2019年時点でさらに開発業者Evolveおよび Milieuとは建設着工までの一時的な畑を、Villawoodとは同社のClyde North開発地区で恒久的な畑を、それぞれ協働している。同記事によれば、Melbourne Waterは自社が保有・管理する土地のうち数百ヘクタール規模を市民の取り組みに開放しようとしていた。
4. 土壌汚染や史跡指定など、土地固有の制約に個別の設計で対応すること。 Assemble Papers(2016年11月25日)によれば、建設予定地に畑を置く際の課題は土壌汚染・微気候・規制上の難しさであり、これを避けるため畑は再利用可能な素材でできた持ち運び可能な容器に組まれている。The Fifth Estate(2019年4月11日)によれば、メルボルン市とはKensington Stockyardで市民農園と堆肥化拠点を整備しており、同地は史跡指定を受けているため、史跡指定を受けた石畳(bluestone paving)を傷つけずにその上に載る形で高床式の花壇が共同設計された。
5. 規制そのものを変える働きかけを並行すること。 Greening the West(2015年5月3日)によれば、Executive OfficerのHannah Schwartzは、市民農園や食料生産の場を作るたびに計画許可(planning permit)の申請を求められる負担をなくすため、規制の枠組みを変える働きかけを背景で続けていると述べている。
確認できないのは、3000acresの年間の運営予算、これまでに開いた畑の総数と現存数、参加者の総人数、そしてVicHealthの種資金とクラウドファンディングそれぞれの実際の金額である。いずれも参照した3本に記述がない。
今どうなっているか
2026年9月時点で確認できた最も新しい記録は、2019年4月11日のThe Fifth Estateの記事である。
同記事によれば、この時点で3000acresは、地域の食料自給に関するメルボルン大学Foodprint Melbourneの報告書『Roadmap for a Resilient and Sustainable Melbourne foodbowl』の文脈で取り上げられ、都市農業への関心が自治体・開発業者・地域社会の側で高まっている時期にあるとGeneral ManagerのMorgan Koegelが述べている。同記事によれば、この時点でYarra市・Moreland市・Darebin市の3自治体が独自の都市農業戦略を持ち、メルボルン市は3000acresと共に、史跡指定を受けたKensington Stockyardで市民農園と堆肥化拠点を整備していた。同記事はまた、VicTrackがVictoria駅の用地を食料生産のために開放しており、そこでは食事支援団体FareShare(3000acresとは別の団体)が菜園を設けていたこと、Melbourne Waterが保有地のうち数百ヘクタール規模をコミュニティの取り組みに開放しようとしていたことも、都市農業への関心が高まっている例として並べて報じている。同記事はまた、3000acresがSustain(Australian Food Network)・Cultivating Community・Permablitzといった団体や、ファーマーズマーケット・食料の物々交換の場とも連携していると書いている。
2019年より後の記録は、今回参照した3本のどこにも含まれていない。 その後の各拠点の存続状況、運営体制の変化、活動規模の推移は、今回の探索範囲では確認できなかった。
出典
- 3000acres – growing on vacant Melbourne — Greening the West(2015-05-03)
- Melbourne's 3000 Acres bridges the gap to establishing community gardens — Assemble Papers(2016-11-25)
- How can Melbourne house 7 million people without destroying its foodbowl? — The Fifth Estate(2019-04-11)
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